国体をめぐる冒険:半藤一利『日本のいちばん長い日』

1945年7月26日にポツダム宣言が日本政府に突き付けられたとき、これを真面目に受け取った人間は、政府にも軍にもいませんでした。すでに沖縄は多大な人的被害を出したのちに占領されていましたが、軍と政府はすでに本土決戦の意思を固めており、むしろ沖縄戦…

ゼロリスクという無限遠点

昨年8月に小池百合子氏が都知事に就任して以来、常に大きな課題であり続けた豊洲市場は、都知事が豊洲移転の容認に傾いたことでほぼ政治課題としては決着したようです。豊洲の土壌や地下水から基準値以上の化学物質が検出されたことが話題となりましたが、結…

新著が出ます:『プログラマのためのSQLグラフ原論』

今月下旬に、J.セルコの『Trees and Hierarchies 2nd Edition』の邦訳が刊行されます。同著者の代表作『プログラマのためのSQL 第4版』のスピンオフの一つで、RDB/SQLで木と階層構造を扱うための方法論にフォーカスしたなかなかマニア度の高い一冊です。主眼…

新著が出ました『SQL 第2版 ゼロからはじめるデータベース操作』

先週、新著『SQL 第2版』が刊行となりました。新著といっても、2011年に発売された書籍の改訂版で、DBSMの最新バージョンに合わせて構文の変更を見直したのと、アプリケーション(Java)からデータベースに接続してSQLを実行する方法について解説する新章を…

蟻と象の闘い『芸能人はなぜ干されるのか?』

芸能人が芸能事務所から独立や移籍を図ろうとするニュースが流されるとき、必ず枕詞のようについて回る言葉がある。芸能関係者による「事務所からの独立や移動はこの業界のタブー」というやつです。このルールは、普通に勤め人をしている人間が聞くと「業界…

10/17にJPOUGで講演します

DB

10/17(土)にJPOUG主催の勉強会@青山で講演します。JPOUG> SET EVENTS 20151017 | Japan Oracle User Group (JPOUG)私のセッションは14:00-14:45で、OracleベースでのSQLパフォーマンスを出すための設計やチューニングについてお話しします。Oracleを使っ…

アフリカンパワーは存在するのか

先週閉幕した夏の甲子園で活躍した関東第一のオコエ瑠偉について、フジテレビなどがそのアフリカ系の出自をクローズアップしたことが、人種差別的だとして一部から批判を浴びました。オコエ瑠偉をフジテレビが「アフリカン・パワー」と紹介 非難の声も - ラ…

あなたの知らない東京裁判:日暮吉延『東京裁判』

今月は終戦記念日に加えて首相の戦後70年談話も発表されたり、玉音放送の原版が公開されたりと、太平洋戦争を回顧する取り組みが例年より多く行われました。70年という節目の年でもあるし、安保関連法案の国会審議が紛糾しているという背景もあって、右も左…

消極的リーダーの戦争責任:勝田龍夫『重臣たちの昭和史』

毎年8月15日が近付くと、各地で戦没者慰霊の式典が営まれたり、メディアが回顧の特集を組んだりして、私たち日本人はいやおうなしに太平洋戦争について考える機会が多くなります。すでに終戦から半世紀以上経過し、当時の状況をリアリティを持って把握するこ…

ありのまま願望を超えて:NHK Eテレ「ねほりんはほりん」

TV

NHKのEテレでやっている「ねほりんはほりん」という番組がNHKらしくなくはっちゃけていて面白いという噂を聞いたので、さっそく見てみました。面白い。確かにこれは面白い。南海キャンディーズの山里さんとYOUさんが司会となって、普通あまり社会の表舞台に…

因果から相関へ:『ビッグデータの正体』

姉さんバブルです。 いろんな会社の営業さんなんかと話すと、とりあえずビッグデータと名前がついていれば仕事や予算の食いつきがいいという状況がまだしばらく続いているようで、何よりな話です。「IoTで集めたビッグデータをNOSQLでリアルタイムに分析」と…

Club DB2で講演します

DB

5/15にClub DB2(恵比寿ガーデンプレイス)で講演を行います。タイトルは「ループをめぐる物語――SQLにおける手続き型の復権」です。中身は、『SQL実践入門』の内容についての解説ですが、特にウィンドウ関数の使い方にスポットをあてて、これまでループの代…

参考文献にかえて

DB

前回のエントリで拙著『SQL実践入門』を紹介させてもらいましたが、本書には参考文献はつけていないので、ここで本書を書く際に参考にした本をいくつか紹介したいと思います。 どちらも実行計画の読み方やメモリ機構、データの物理的な格納方法などDBMS内部…

新著が出ます:『SQL実践入門』

DB

4月中旬ころになりますが、新著が出ます。SQLのパフォーマンスを主題にした本で、実行計画を読むことで、なぜこのSQLは遅いのか、あるいは速いのかをデータベースの内部動作まで把握して理解しよう、という趣旨です。リレーショナルデータベースというのは、…

不作為の罪:『なぜ、システム開発は必ずモメるのか?』

システム開発というのは、トラブルの集積です。例外なく。大から小まで、パッケージ開発からマイグレーションまで、もめることのないプロジェクトは存在しません。 みんなそれなりに頭もいいし、人間的にもまともな人たちが集まって仕事をしているはずなのに…

新著が出ます:『おうちで学べるデータベースのきほん』

DB

皆さん、お元気でしょうか。だいぶご無沙汰していましたが、2/13に新著が出ます。MySQLエンジニアとして有名な木村明治さんと共著のデータベース入門書です。内容はすべて書下ろしで、データベースをはじめて触るという本当の初心者の方から、ユーザとしてす…

西内啓さんと対談を行います

DB

5/24(土)にCodeZine主催の対談に参加します。お相手は統計解析のプロフェッショナルとして名高い西内啓さんです。統計解析とデータベースの接点について議論させていただく予定です。 公開対談ですが、後日CodeZine上でも文字起こしした記事が掲載されるそう…

新著が出ます:ジョー・セルコ『プログラマのためのSQL 第4版』

SQL

皆さん、お久しぶりです。長らくブログの更新が止まっていたのは、少し大きな仕事をしていたためです。ジョー・セルコ『プログラマのためのSQL 第4版』の翻訳。これに集中するため、ブログもやらずTwitterもやらず(こっちはちょっとやってしまった)頑張っ…

Club DB2 でゲスト講師をしました

DB

昨日 7/13 に渋谷マークウェストで Club DB2 のゲスト講師としてお話をさせていただきました。RDB の設計における物理と論理のせめぎあい(トレードオフ)というテーマで、前回以上に自由に喋らせていただきました。いつもながら運営の寛大な方針に感謝して…

Club DB2 で講師をします

DB

7/13(金)の Club DB2 で講師をやります。タイトルは「達人が語る こんなデータベース設計はヤダ!」。場所は渋谷で、19時〜21時の予定です。Ustream 中継も行われるので、遠方の方や時間の都合がつかない方はこちらで視聴することもできます。

豹変しない日本人

先週、大阪市の橋下市長が、関西電力の大飯原発の再稼動を容認する声明を出しました。これまで積極的に脱原発の方針を推し進め、原発の再稼動にも反対してきた橋下氏としては、ほぼ180度の方針転換といってよい内容です。 長期的な方向性としては脱原発にも…

幸せになる働き方:御手洗瑞子『ブータン、これでいいのだ』

本書は、コンサルタントである著者が、約1年間、ブータン政府職員として働いた経験をもとに書かれた見聞記です。実際に住んで現地の人と生活をともにした人ならではの生き生きとした描写が、ブータンの人々への暖かい共感とあいまって楽しみながらブータンに…

頑張れ共和党:『スーパーチューズデー』

評価:☆☆☆★★ 映画の出来としては、特に見るべきもののない凡作です。もの凄くひどいわけでもないのですが、わざわざ映画館に見に行くほどのものではありません。金曜ロードショーでやっていたら見てもいい、というレベル。というわけで評価は★二つ。(ちなみ…

人はみな、ナチュラルボーン・キラー

New York Times の記事より。("When the Good Do Bad") 今月 11 日、アフガニスタンで民間人 16 人を米兵が銃を乱射して殺害した事件は、世界中に衝撃を与えました。単に痛ましい事件というにとどまらず、タリバンが米国との和平交渉を打ち切ると宣言するほ…

初代アンドロイド:ヴィリエ・ド・リラダン『未来のイヴ』

理想の女を追い求めて破れる男、というのは、古今東西、文学に繰り返し現れるテーマです。ビッグネームだけを追ってみても、古くは『源氏』、近代には『ファウスト』という古典を挙げることができます。前者の主人公は幼女誘拐&監禁飼育という現代のアダル…

新著が出ます:『達人に学ぶDB設計 徹底指南書』

DB

3/16 に新著が出ます。タイトルは『達人に学ぶDB設計 徹底指南書』。名前からピンと来た方もいるかもしれませんが、『達人に学ぶ SQL徹底指南書』の続編に当たります。本の装丁も同じ轟木亜紀子さんにお願いしたので、シリーズものっぽく仕上がっています(…

教父たちの遺産:八木雄二『天使はなぜ堕落するのか』

評価:★★★★★ 哲学の分かりにくさには、大きく二つの種類があります。一つが、純粋に論理的な難しさ。特に強い論理性への志向を持つ現代の分析哲学などを学ぶと、論理学や数学と類似の難しさを感じます。 哲学のもう一つの難しさは、もう少し根が深く微妙なも…

「SQL緊急救命室 第6回」

SQL

最近いろいろ立て込んでいて周知が遅れてしまいましたが、『Web+DB Press Vol.67』に「SQL緊急救命室 第6回」が掲載されました。今回のテーマは「更新」。 SQL は、もともと検索用途を中心に想定して開発された言語であるため、更新機能は貧弱でした。今でも…

選択可能性と差別

最近、企業の新卒採用活動に色々とユニークな動きが出てきています。ユニクロが大学生の学年に関係なく通年で採用活動を行うことを表明したと思ったら、今度は 100 年近く続く出版社の老舗岩波書店が、応募要件として社員や著者の紹介状が必要なことを宣言し…

「SQL緊急救命室 第4回」が Web 公開されました

SQL

技術評論社のサイトに「SQL緊急救命室 第4回」 今回のテーマは「スーパーソルジャー病」です。優秀なプログラマが陥りがちな間違いの一つが、難しすぎるコーディングをすることです。もちろん高度なコーディングが必要とされる局面はあるのですが、テーブル…

世界の DQN ネーム事情

The Economist の記事より。("Baby names") DQNネーム、あるいはキラキラネームと呼ばれている名前があります。子供に付けられる、奇抜で読みにくいことを特徴とする名前のことで、大熊猫(ぱんだ)君とか今鹿(なうしか)ちゃんとか、結構な破壊力を持つ名…

公共事業としてのセンター試験

先週の土日はセンター試験でした。受験生にとっては人生を左右する 2 日間だったでしょうが、センター試験というのは、見方を変えると巨大な公共事業という側面を持っています。受験生から集める受験料(検収料)だけでも毎年 100 億前後にのぼり、多くの人…

ヨドバシカメラとアップルストアの違い

The Economist の記事より。("The cost of a free ride") 皆さん、ネットショッピングはするでしょうか? する、という人たちにお聞きしたいのですが、こんな行動を取ったことはないでしょうか。 まず、下見をするために、実物を置いてある店舗まで出かけて…

人に本当のことを言わせる方法

昨年の大晦日、オウム真理教の特別手配犯になっていた平田信容疑者が警察に出頭するという事件がありました。このときの経緯は、平田容疑者は警察に出頭するも、イタズラだと思われてなかなか本人だと信じてもらえず、たらいまわしにされるという喜劇的なも…

フリーライダー化する女性たち

職場に女性が進出するようになって以来、出産・育児休暇を取得する女性の職場での処遇というのは、常に論争の的です。特に、企業は規制によって出産を理由に解雇することができないため、女性には制度を悪用してフリーライダーになるインセンティブがあるの…

階級社会アメリカ

New York Times の記事より。("Harder for Americans to Rise From Lower Rungs") 日本はいま、階層が二極化しているだけでなく、階層が固定化される社会に向かっていると言われています。親が貧乏だと、子供も満足に教育を受けられず貧乏なまま人生を終え…

江戸時代のオリンパス

この時期の定番ドラマのひとつに『忠臣蔵』があります。主君の名誉を守るため、政敵の家に押し入って敵討ちを果たして、最後は全員切腹するという、元禄赤穂事件を題材にした日本人なら誰でも知っている物語です。この特異な物語にひきつけられるのは日本人…

掛け算論争について

大手小町風に言うと(駄)なエントリです。年末で暇をもてあましている人向け。 ここ数日、Twitter のタイムラインに流れてきている掛け算論争。断片的なツイートを追いかけただけでも、瑣末な問題、という印象をぬぐえないのですが、小学校時代に算数で味わ…

話しあっても分かりあえないときはブロックしよう:東浩紀『一般意志2.0』

「ブロックせずに他者と渡り合うのが正義」というリベラルな思想は現実性の乏しい理想論というのがぼくのツイッターの見方で、そして一般意志2.0の主張でもある。――東浩紀(2011年12月23日にTwitterで) 本書は、ルソーとフロイトの思想を Google や Twitter…

『Web+DB Press Vol.66』「SQL緊急救命室 第5回」

SQL

『Web+DB Press Vol.66』に「SQL緊急救命室 第5回」が掲載されました。今回のテーマは、「時代錯誤症候群」。 標準 SQL は数年に一度改訂が行われており、大幅に新機能が追加されていきます。そして SQL の改訂の仕方というのは、他の言語と違って、古い構文…

『Economist』:イランの市場原理主義

今年の6月、重い腎臓病を抱えた堀内利信医師が暴力団から腎臓を買ったという事件が起きました。テレビをはじめマスコミでも大きく取り上げられたので、記憶されている人も多いと思います。 日本では臓器売買は違法なので、その点で法を犯した医師の行為は咎…

その数学が勝負を決める:『マネーボール』

評価:★★★★☆ セイバーメトリクスという野球の戦術をご存知でしょうか。いや、戦術と呼ぶのは誤解を招くかもしれません。セイバーメトリクスは、送りバントやヒットエンドランのような、野球の試合中に仕掛ける個々の行為ではないからです。むしろそれは、チ…

『WEB+DB PRESS 総集編 [Vol.1〜60]』

DB

技術評論社の『Web+DB Press』がめでたく 10 周年を迎え、総集編記念号が刊行されました。その中で「Topエンジニアが伝えたいこと」というエッセイ集の企画が組まれており、私も「データベースを動かす二つの力」というタイトルで寄稿させていただきました。…

新聞休刊日の謎、あるいは非情緒的な村上春樹の疑問

Twitter で「新聞休刊日が全紙同日休刊なのは妙だ。談合でないか」という趣旨のツイートをしたところ、かなり多くの方からコメントをいただきました。そんなに世間で関心の高い話題だとは思わなかったので、意外に思いましたが、よく考えれば身近な割に、そ…

「SQL緊急救命室 第2回 冗長性症候群」

SQL

技術評論社のサイトで「SQL緊急救命室」が公開されました。 今回の病気は「冗長性症候群」。これは非常にポピュラーな病気です。なぜかというと、手続き型言語でプログラミンを勉強したプログラマが一度は必ず通る「はしか」みたいなものだからです(最近は…

借金を返さないと何が起こるか:ラインハート=ロゴフ『国家は破綻する』

政府は少なくとも 100 年に一度は、財政均衡を回復するためにデフォルトを起こさなければならない。――アベー・テレ(18世紀のフランスの蔵相) 向こう見ずな個人が借金に借金を重ね、債務を膨れ上がらせると、まず最初に、貸し手がいなくなります。新しい貸…

借金はどうやって返せばいいか

日本の政府債務は、943兆円強(2011年6月末時点)と、近く 1000 兆円を突破する勢いで増え続けています。また新しく首相になった野田氏はかつてから財政タカ派として知られており、増税による財政健全化に意欲を見せています。いよいよ大増税次代の到来が近…

科学の立証責任:あなたは天空のティーポットを信じますか?

3月11の福島第一原発の事故以来、放射能が健康に与える被害というのは、日本人(特に東日本に住んでいる人)にとって避けられない関心事となりました。私も知り合いに聞いた話では、柏市や松戸市といったホットスポット地域に住んでいる人たちの中には、本当…

『Web+DB Press Vol.64』「SQL緊急救命室 第3回」

SQL

『Web+DB Press Vol.64』に「SQL緊急救命室 第3回」が掲載されました。今回のテーマは、「ループ依存症」。 ループというのは強力な道具です。これを使わずにコーディングしろ、と言われたら、ほとんどのプログラマはお手上げでしょう。でも、リレーショナル…

コンピュータをぶっ壊せ:新井紀子『コンピュータが仕事を奪う』

前回に引き続き仕事について: ここ数年、というかもう十数年、日本の経済についてはあまりいいニュースがありません。震災の影響は別にしても、その前から日本は長期停滞街道を驀進しており、私のような団塊ジュニア世代ともなると、十代の頃から不況しか知…