Web2.0は民主主義の理念を実現するか? (2) Google

 Google のサイトには10箇条の経営理念が掲載されています。「一つのことを極めろ」とか「スーツなんか着なくていい」とか、アメリカ企業らしい言葉が並ぶ中、妙なのが第4条:

  民主主義はWeb上でもうまくいく(Democracy on the Web works)

 検索エンジン(だけでもないけど)の会社が民主主義? 何だそりゃ? 一私企業が掲げる社訓としては、異質な印象を受けるでしょう。日本でこんな理念を掲げてる会社はありせんし、アメリカでも珍しい。

 Googleがどういう意味で民主主義という言葉を出したのか、その内容はすぐ下に書いてあります。要するに、Webサイトの良し悪しは「少数の編集者」という権威が決定するものではなく、万人の広範な評価によって、初めて適正に評価される、ということです。前回も出ましたね、この考え。反権威主義的な多数決主義。

 PageRankは、多くのサイトからリンクされたサイトを「良い」と見なします。サイトを有権者と見なせば、まさに投票で評価を決める民主主義(評価に重み付けがあるので、完全な一人一票ではないけど)。この信念のもとでは、「誰も見向きもしない不遇な良質サイト」は存在しないことになります。良いものは必ず大衆に支持される。反対に、製作側がどれだけ力んでも、多数派の支持を得なければ意味がない。この方式は、Yahoo! の専門家によるランク付けシステムと好対照を成しています。再び裁判制に喩えるなら、Yahoo!裁判員制、Google陪審員制、という感じです。

 権威主義と大衆民主主義、どちらが良いか、という問いには意味がありません。権威主義には少数エリートの専制へ傾く危険があるし、大衆民主主義は衆愚政治に傾く危険がある。定見のない私みたいな人間は、数十年のスパンで両者の間を振り子みたいに揺れ動くのが安全だろう、などと思います。日本は戦前、ヨーロッパ型のエリート主義を主にドイツから輸入して、戦後はアメリカの反権威主義を輸入しました。あと十年ぐらいしたら、また振り子が戻るんじゃないでしょうか。

 さて、つらつら書いてきましたが、次回がまとめです。