Web2.0は民主主義の理念を実現するか? (3) 「みんなの意見」は案外

 経済学者の小島寛之さんが著書でこんな話を紹介しています。

 小島さんの友人が小学生のとき、クラスで「立方体を平面で切ったら切り口はどんな図形になるか」という話題になったそうです。大半の生徒たちの答えは「そりゃ立方体なんだから、切り口も正方形にきまってらあ」。

 しかし、クラスでぬきんでて数学のできた友人は、ただ一人、切り方によって色々な図形になる、ということを見抜きました。そこでその旨を主張すると、これがクラス中から総反対(「○○クンの言ってることはおかしいと思いまーす」「そーだそーだ」)。

 議論は平行線をたどって埒があかない。で、業を煮やした多数派の生徒たちがどういう風に決着をつけようとしたかというと……

   多数決で多い方を正解とする。

 もちろん、ただ一人正解を主張していた友人は「選挙」で惨敗。ただ、友人は粘り強く論証を続け、何とかみんなを納得させるところまで持っていったそうです(タフな子だね)。

 この話が教えるように、多数決主義をうまく動かすには、実は前提条件がいります。有権者の多数派が十分な教育や訓練を受けていて、争点をよく理解していること。要するに、みんなが「良識ある市民」であること。

 これは、イラク民主化プログラムを巡ってアメリカと西欧が対立した争点そのままです。まずはちゃんと教育を受けさせないと、選挙なんかやっても無意味だと主張するヨーロッパに対し、アメリカが迅速な選挙の実施に固執したことは、記憶に新しいでしょう。

 さて、どうだったでしょう。Web2.0という一見新しいと思われる潮流が、アメリカの正統的な思想に沿うものだ、ということがお分かりいただけたでしょうか。

 ところで、ちょっと皆さんにも考えてもらいたいのですが、このWeb2.0、果たして日本ではどんな方向へ向かうでしょう? それ以前に、日本では機能するでしょうか? これは、これから私たちにも直接関係してくる重要な問題ですよー。

 全国のDBエンジニアの皆様から熱い支持をいただいております「リレーショナル・データベースの世界」が、めでたく「はてなブックマーク」で1000件を突破いたしました(ちなみに、はてなブックマークWeb2.0。不特定多数の人に一人一票与えて「投票」してもらうシステムだから)。

 ニュース系のサイトではないので、がっと短期間であがるのではなく、じみーに数年かかっての到達となりました。このペースで細く長くいきたいものです。ベストセラーよりロングセラー路線です。

 というわけで、久々に記念コンテンツを用意してみました。全部は準備が間に合わなかったので、何回かに分けて小出しにしていきます。最近はCodeZineでTipsを定期的に出しているので、今回は軽く読めるコラムをたくさん用意しました。まずは、次の三つです。

「手続き型から宣言型・集合指向に頭を切り替えるための7か条」
 これまで色々な記事に書いてきたポイントの総まとめです。なかなかよくまとまった。サイトのマニュフェストに使ってもいいぐらい。

「GROUP BY と PARTITION BY」
 GROUP BYとPARTITION BYが何をやっているのか、皆さん深く考えたことあります? 私がモットーとする「実践と原理の架橋」を、群論でやってみました。

「130値論理」
 こえー。いやあ、怪談の似合う季節になりましたね。