ボンクラの諸君に告ぐ

 私が私淑する師匠の一人、内田樹さんが「ボンクラ」と呼ばれる一群の人々について素敵な考察をしています。詳しくは「おとぼけ映画批評」の『ブキー・ナイツ』の回を見ていただくとして、一言で言えば、「幸せに〜なりたいけど〜頑張りたくない〜」というあの名曲を地で行くロクデナシどものことです。私が観察するところ、その特性は、大体こんな感じです。

  • 欲望が強い
  • でも努力は嫌い
  • 面倒なことも嫌い
  • 煩瑣な事務仕事などもってのほか
  • 嫌いなことはすぐ後回しにする
  • そして一瞬で忘れる
  • 他人に迷惑をかけても一向に反省しない
  • 態度が悪い
  • 上司をアホだと思っている
  • 上司からはアホ以下だと思われている

 要するに『こち亀』の両さんを思い浮かべれば間違いありません。そしてなぜか、日本でボンクラどもの一大生息地と化しているのが、我がIT業界。これは内田さんもどこかで認めていた(確か「最近は態度の悪い学生は院には来ずにみんなSEになってしまう・・・」というようなぼやき節)。

 なぜボンクラがこの業界に吸い寄せられるのか、私自身は真面目すぎてボンクラ失格な人間だけど、その理由はよーく分かります。秘密は、《「楽して・・・できる」ものをつくったりすることにはついては異常に勤勉》というボンクラ唯一の美点にある。

 本当に、この一点にかけてはボンクラは目を見張る能力を発揮します。仕事を効率化する自作ツールを幾つも作り、あっと驚く効率的なテスト方法を考え、煩雑な業務要件を簡潔なロジックにまとめあげる。「仕事は嫌いだけど、仕事を早く終わらせる方法を考えるのは好き。さ、家帰ろ」という彼らは、貴重なイノベーターとしての役割を担います(両さんもイノベータとしては優秀)。IT業界は、他の業界に比べて創意工夫の余地が多いので、彼らが活躍できるのです。

 一般的な評価基準ではただの「無能」や「怠け者」にカテゴライズされかねない彼らを、どれだけ許容して放し飼いにしておけるか、ということが、組織の度量を決めます。最近、この業界も風通しが悪くなって、ボンクラには棲みづらくなってきたけど、みんなボンクラ魂を忘れず、頑張ってほしい(いや、頑張るのはボンクラ主義に反するか)。

 とにかく、ボンクラは日本の宝です!