民主と独裁

 たけしのTV番組でブータン民主化にまつわるゴタゴタを取り上げていました。この国も変った国だ。

 私たちは「独裁国家」と聞くと、ほぼ無条件で北朝鮮旧ソ連ナチスドイツやアフリカの諸国みたいな悲惨で破滅的な国家を思い浮かべがちですが、でもそうでない独裁国家もないわけじゃありません。今日放映されていたブータンのほかにも、お笑い独裁国家として名高いトルクメニスタンや、開発独裁でちゃんと発展を遂げたシンガポール。そういう国では、民主主義なんかなくても国家は粛々と運営されているし、国民の大半も満足して暮らしています。そもそも世界的に見ると、民主主義が浸透している国の方が少数派です。

 これだけなら、AもあればBもある、という相対主義で終りなんですが、でも独裁って、はたして長期的にやっていける体制なのか、私にはよく分かりません(実際に独裁国家に住んでいて、その体制に満足している人達はそう確信しているかもしれないけど)。実際、ブータンでも「このままでは長くはもつまい」と国王が決断したからこそ、民主化への移行が模索されているのでしょう。

 民主主義にも問題は、そりゃあたくさんありますけど、でも安倍さんが辞めてから福田さんが首相に就任するまでの10日ほど、リーダー不在でも国家運営に大きな支障が生じないというのは、やはりなかなか頑健な体制だと思います。この間隙を突いて反政府ゲリラが武装蜂起することもなかったし、株価が暴落することもなかった。政治家や官僚の方々はてんてこ舞いだったかもしれないけど、おかげで末端市民の生活は普段となんの変化もありませんでした。ブータンで国王が病に倒れたら、こんな呑気にはかまえていられまい。ミャンマーの緊迫した情勢と比べても、今回の一件で「日本は平和だ」と思ったのは私だけじゃないはず。

 その意味で、民主主義というのは面倒で意思決定の速度は遅いし、思いきった政策もとりづらいけど、最悪の事態を回避することに主眼を置いたフォールトトレラントないしはフェールセーフな設計に基づくシステムなのだなあ、と再確認した次第です。このタイプのシステムは、パフォーマンスは出ないし複雑で冗長なのだけど、でも「堅い」。