白熊さんは困ってません

 昨日の続き。イギリスで「ゴア『不都合な真実』は、学校で見せるときにはその内容が一方的で間違っている部分についてちゃんと説明すべし」という判決が出たそうです。

シロクマが死んでるという(ナショナルジオグラフィック谷山浩子が最近便乗している話)はまったくのウソ、海面上昇のCGもあまりに誇張がすぎるし、キリマンジャロは温暖化のせいではない等々。こういうきちんとした判断を司法が下すというだけですばらしい。

 おっしゃるとおりです。「温暖化ではたしかに北極のシロクマさんたちは生活を脅かされて困っているであろうが」と心配していた内田さんにも聞かせてあげたい。実にタイムリーな報道でした。

 ゴアさんはノーベル平和賞を受賞した、というのはちょっと驚いたけど、まあ平和賞と文学賞は「価値の世界」(もっと言うと政治の世界)の賞だから別にいっか。これで仮に自然科学系の賞をもらったりしたら選考委員会の正気が疑われただろうけど。

 小谷野敦『すばらしき愚民社会』を読了。「前に比べて内田樹の評価が下がった」と書いてあって、これもタイムリーな記述。でもやっぱりそう思っている人が少なくないってことかも。他にも、大学の数を減らせ、バカに選挙権はやるな、フェミニズムなんてぶっとばせ(でも斎藤美奈子はみどころがある)、精神分析疑似科学だから信用するな、歴史的な視点は(特にバカには)大事だ、等など、真っ当だけど今の時代には受け入れられがたい主張を堂々と展開しているクソ度胸がすがすがしかった。『Web進化論』への批判も的を射ている。科学哲学者のポパーを高く買ってるのも好感。この人長生きだったから著作権まだ切れてないんですけど、もし切れてたら私も訳したいなーと思ったことがある。

 小谷野さんは『もてない男』だけが有名になりすぎて他の本がかすんでしまったけど、いい本を沢山書いています。本格的な文学批評『聖母のいない国』、恋愛至上主義にメスを入れる『恋愛の超克』と『性と愛の日本語講座』、ちょっと手軽なエッセイで『軟弱者の言い分』も悪くない。

 私はつくづきこういう「身も蓋もない系」の書き手が大好きなんだなあ、と思うのでありました。