シルバービジネス

 斎藤美奈子『冠婚葬祭のひみつ』を読了。今回は斎藤節はちょっと影を潜めて大人しかったのは、岩波新書ということで遠慮したのと、確固たる敵が存在しないテーマだったからでしょう。著者が普段、敵として批判の矢を雨あられのごとく浴びせ掛けるのは、父権制イデオロギー、平たく言うと「オヤジ」ですが、今回はそういう分かりやすい敵がいなかった。この人は強大な敵と闘うときに最も躍動するタイプの人なので、あのやんちゃな文体のファンにとっては期待外れかも。

 でもそうはいっても、鋭い洞察力は健在です。今後の結婚と葬儀のビジネスについての行く末の予想はなかなかいいセンいってます。いまや介護をはじめとしてどの業界も老人をメインのマーケットに見定めて商品開発に力を入れていますが、その点では葬儀というのは究極のシルバービジネスです。なんつっても、生涯結婚しない人はいても、死なない人はいないものね。みんな一度は死なねばならない。そして死ねば、日本人は何だかんだで葬式は出します。若い世代には「散骨」が人気で、葬式離れが進んでいるそうですが、まだまだ一般的な風潮にはならない。というわけで、日本ではこれから葬儀業界が花形産業になるのは間違いありません。何だか暗い話だけど、需要があるのだからこれは致し方ない。

 テレビでロンドンハーツの「キャバクラ嬢100人に聞きました」に宮崎哲弥さんが出ていたのでぼーっと見る。「奥多摩は固定資産税安い」というコメントが渋い。

 この番組で、面白い取り組みをしている大阪のキャバクラが紹介されていました。昼の3時から店を開けるという「昼キャバ」。一体どんな客が来るの? というみんなの当然の疑問に、お姉さんはこともなげに答えていわく、「そりゃ、おじいちゃんですよ」。

 うーむ、そうきたか。これは一本とられた。先見の明がある経営者がいたものだ。宮崎さんが言うとおり、キャバクラは風俗なんかとひとくくりにされがちだけど、こうなると一種の介護ビジネスと言って差し支えない(実際、介護の現場で老人の性の問題に直面するヘルパーも多い)。「天国に一番近いキャバクラ」という土田のコピーもキレがある。間違いなくこれからキャバクラの主流になるに違いありません。予想外に勉強になる啓蒙番組だった。