そ連とソ連

 本屋をぶらぶらしていたら、白水社晶文社平凡社など独自の文庫を持っていない人文系出版社が共同でソフトカバーの書籍を作る四六判宣言のフェアをやっていたので、ちょっと覗いてみました。宣言文には「敢えて売り捨ての文庫にはしない」という勇ましい文言が並んでるけど、実情としては文庫にしたくてもできないがゆえの苦肉の策、という側面もあるのでしょう。でもなかなかいいアイデアだと思う。書籍も各出版社の一押しだけあって、統一感は欠けるけど面白いものが並んでいました。

 白水社のコーナーに私の永遠のアイドル斉藤美奈子『それってどうなの主義』を発見したので迷わず購入。私もまた「それってどうなの主義者連盟(略称:そ連)」には勝手に加入させていただいているので、同志斉藤へ活動資金を捻出することは義務でもあるのです。

 この本は、斉藤美奈子のものとしては、はっきり言ってあまりいい出来だとは思いません。この人は時事ネタを扱うのが得意じゃないし、真面目な論題を扱うのはもっと得意じゃない。彼女一流のシニカルで鋭い、それでいて茶目っ気のある文章の魅力が半減してしまう。あの犀利な分析も影をひそめます。それでも、いつも飄々として真情を見せないこの人が実はとても真面目で正義の人であることがよく分かるという点で興味深い本です。

 私はずっとそう思っていたけど、斉藤美奈子は、実は熱血な正義漢です。文庫版『モダンガール論』の巻末に学生時代の恩師が彼女の大学生の時のエピソードを語っていますが、それを読んで私は深く納得するものがありました。これは山形浩生さんや内田樹さんにも通じることだけど、今の世で正義を語るためには、一度偽悪の仮面を付けて迂回路を通らないといけないようです。何でそんな面倒な手続きを踏まねばならないのか、という背景には、それなりに色々屈折した事情と戦略があるのでしょう。

 ともあれ、皆様もぜひ「そ連」をよろしく。何せ吹けば飛ぶよな弱小セクトなので。内ゲバはなさそうだけど。