競争が怖いか

 前回に続いてもう一つ教育関係のエントリを。

 秋田県学力テストの市町村別平均点数を公表したことがニュースになりました。このことについての批判は、主に公表に踏み切った県や知事の権限や生徒のプライバシーといった法的な性格のものと、「過度な競争を助長するからよくない」などの倫理的なものに大別されます。

 このうち、問題にする価値があるのは前者だけで、後者はまずナンセンスです(でも、前者についても、平均点数が個人情報にあたるという批判はバカバカし過ぎる。それを言ったら全ての集団的属性が公表できなくなる)。

 さて、もし結果を公表することで、生徒の競争意識を高める効果があったとすれば、それはむしろ大変よいことです。単純な平均値だけでなく、メジアンやモードや分布のグラフまで公開したらもっと良かったと思います。なぜなら、今でも現実に学校では生徒が競争しているのであり、であれば、競争を公平なものにするためには、情報の非対称性があってはならないからです。競争の主体たる生徒が学校選びに正しい判断を下すためには、正しい情報が必要です。もし今回、この面で秋田県が非難されるべきだとすれば、それは公表した情報が間違っていた場合です。

 生徒たちの多くは、(教員を含む)公務員などの非競争部門に就職するか、一生遊んでブラブラするのでない限り、必ず社会に出て民間企業で働くことになります。そして、日本の社会は競争的な社会です。でも学校がそのことをアナウンスせず、生徒をなるべく競争から遠ざけようとするので、社会に放り出されてからギャップに苦しむことになる。だから、生徒を早いうちから競争に慣れさせることは、決して本人にとってマイナスにはならない。その上で、自らが競争に向かないと早期に悟れば、対策も考えられる。社会に出てから気付いても、多くは手遅れなのです。私自身、競争の厳しい業界に生きてきたため、不幸な例を幾つも見てきました。全てが教育のせいだとは言わないけれど、あまりに競争に対してナイーブすぎるがための問題も多い。

 教育に競争原理を持ち込むことを怖がっているのは、生徒ではなく、競争に曝されるのが嫌な教員の方ではないのか。