これがウィルスの生きる道

 今回の世界的な不況で、私たちのほとんどは悲鳴をあげていますが、ただ一人、諸手を挙げて喜んでいると推察される女性が一人います。それは誰かといえば ―― お分かりでしょう、我らが母なる地球です。

 実際、池田信夫小谷野敦が勇敢にも言うように、環境に一番優しいのは車を減らすことだし、ドライブなんていう悪習はすぐにでも法律で禁止した方が地球のためです。エコ車がただの欺瞞でしかないことは、小田嶋隆が看破するとおりです。

 クルマのエコ替えは欺瞞。っていうか、エコエコ詐偽だよ。トヨタ流の。

 シンプルマチコさん(←ニッサン・マーチのCMキャラ)も、ちょっとヘンだと思う。
 「エコバッグでお買い物」とか言ってるけど、クルマで買い物に行ってたら意味ないだろ?

 地球に優しいのは不景気。あと、恐慌と戦争と天災と少子化。疫病も。
 心構えとしては、貧乏と吝嗇が必須。最エコ。
 最悪なのはおしゃれ、流行、グルメ、モテ志向あたり。
 その意味では、原油を投機対象に金儲けをたくらんでいる悪党どもが、一番エコなのかもしれない。
「偉愚庵亭憮録」2008.06.28)

 消費にせよ生産にせよ、私たちが経済活動を活発にすればするほど、地球はそのリソースを消費し、環境は不可避的に汚れていきます。この人間と地球の関係を一言でまとめるなら、私たちは地球にとって寄生虫だ、ということです。いや、宿主に向かって「優しくしてやろう」なんて、虫にしてはずうずうしさが過ぎる。ここはかのカリスマ市長、広川剛志に倣って、寄生獣と呼ぶのが正しいでしょう。『寄生獣』において、田村玲子や後藤は、放っておけばやりたい放題で宿主(地球)を死に至らしめる不埒なウィルスどもを捕食する白血球の使命を帯びて遣わされた存在でした。ウィルスと同じように、私たち人間は増えようとする本能を持っていますが、あまり増えすぎると、やがて宿主は死んでしまう。そのときは私たちも道連れです。

 従って、HIV やインフルエンザなど、宿主の体力を致命的に奪い死に至らしめる連中は、見た目こそ派手で耳目を集めますが、ウィルスとしては下の下です。自分たちも一連托生の宿主を殺してしまうなど、低脳の極みであり、ウィルスの風上にもおけない。人間に対する白血球がいない現実世界では、ファージウィルスのように、時に宿主の役にもたちつつ、つかず離れずのところでよろしくやっていくのが大人の処世というものです。その意味では、人間にもある意味、集合的無意識のレベルで調整弁が働いているのかもしれません。

 不況で自動車が売れない? けっこうけっこう。おかげでガイア父さんは大分呼吸が楽になったよ。少子化? まあ嬉しい。おかげでテラ母さん、毎朝のご飯の手間が省けて助かるわ。ついでに晩御飯も作らなくてすむとより大助かりなんだけど。

 ジャコバン的急進派の広川は、人為的に人間を間引く構想を持っていましたが、少子化は、そんな無理をしなくても人口を抑制できる効率のよい手段です。同じ意味で、同性愛もウィルス量の減少に貢献して大変素晴らしい。

 ガイア理論は、ポエムと科学の区別がつかないへっぽこエコロジストを沢山生んで、一時期胡散臭い眼で見られていましたが、一番の功績は、人間をウィルスとして捉えるような、壮大なマクロ的視点を提供したことだったと思う。