日本経済を救うホープは誰か

 数年前の年の瀬、地元に帰って学生時代の同級生と小さな忘年会を開いていたときのことです。何の話のつながりでそうなったのかよく覚えていませんが、自分たちは物欲の少ない世代だ、という話が出たことがあります。車にも旅行にも美食にファッションにもさして興味がない。酒やタバコなどの嗜好品に耽溺するわけでもない。それでいて、特に現状に不満もない ―― まあ、たまたまそこにいたメンツがそういう傾向を強く共有していた、というだけかもしれない。買い物が好きで物欲の強い人間も、同年代にはちゃんといる。それでも、もっと上の世代、特に社会人としてバブルを経験した人々の「弾けた」メンタリティとは、やはり一線を画するものを感じるのも確かです。

 私が個人的に、この「世代間の差」を強く感じたのは、あるマンションへ引越したとき、同じ階に入居した40台前後の夫婦が、あらん限りの家財道具や馬鹿でかい箪笥を部屋に詰め込んでいるのを見たときでした。おいおい、そんなに詰め込んで一体どうするんです? 部屋が狭苦しくなるだけじゃないですか。でも、これはきっとお節介で、こういう人たちには、がらんとした部屋が物で埋め尽くされていくのを見るのが、きっと楽しいのでしょう。自分とは対極だな・・・としばし引越し作業をサボって眺めていたものです(そのとき私たちの荷物には箪笥もなければテレビもなかったので、引越しはすぐに終わった)。

 私たちロスジェネ世代は、10代の小銭を手にし始めたときにバブルが崩壊し、その後ほとんど不況の中で生活してきました。そのため、躁的にうかれた消費を経験したことがありません。物がたくさんあるということに幸福感を感じず、むしろシンプルですっきりした生活を「スマート」と感じる。また、将来や雇用の不安が大きいため、短期的な出費は長期的なサバイバルに悪影響を与える、という危機感もある。

 こういう保守的な傾向を、ミニマムライフと呼んで、景気悪化の元凶の一つとして攻撃するエコノミストがいますが、撃つ相手を間違えています(例えば木村剛「ミニマムライフは日本を弱体化させる」)。なぜかというと、もともと若者は大してお金を持っていないので、彼らの消費なんか日本全体の GDP からみたらごく一部だからです。日本の個人金融資産の8割は50代以上が握っているオレオレ詐欺の諸事件が図らずも世間に示した事実は、高齢者が意外に大金を持っているということでした。いくら本人が焦って振り込もうとしても、手元不如意ではこの詐欺は成立しない。だから、本当に消費を煽りたいならこの世代をのせた方が効率的です。心理的にも、団塊世代は引っ込み思案な20代よりずっとイケイケだし。

 いまの日本の不況は、一時的な不運などではなく、輸出に頼りすぎた産業バランスの悪さに起因するものです。だから、この事態はいつか必ず来たのです。これに対応するには、内需を拡大して産業のバランスを回復し、今回のような極端なブレがない構造に作り変えるしかない。このことは、国内の経済学者の間でも(池田信夫「これから起こる大激変」)、『Economist』のような海外メディアでも意見が一致しています(「Troubled tigers」)。
 若い頃に倹約家なのは、別に悪いことじゃありません。というか、金のない人間が無理して消費者金融で借りてまで内需拡大に貢献してしまうと、長期的には全体最適にはならない。当たり前だけど。そのような訳で、こんな天気の悪い寒い日は巣にこもって『銀魂』と『ER』という夢のコラボを楽しむのが一番、というのが今日の結論。

 おおおおおロマノぉ。どうなってしまうんだあ。第9シーズンはのっけからテコ入れしすぎだぁ。