社長、お言葉ですが・・

 今週の『モーニング』で島耕作が企業献金について面白いことを言っていました。再現するとこんな感じ。

 「社長、こたびの件で企業献金について世間が騒いでおりますが、我が社は大丈夫でしょうか」
 「案ずるでない。我が社はかねてより自民党6割、民主党4割の率をキープしてきっちり献金しておる。政権交代しても影響はない。」
 「さすがでございます。これで我が社も安泰でございますな」
 「うむ。それに野党にも献金するべきだとは、かの偉大な先々代の決められたことじゃからな。野党の若手にも活きのいいのはおるはずじゃ、そうした国士を育てるのもまた我らの使命よ。」
 「先々代と社長の国を思うその志、まさに百年の計。臣は敬服いたしました。」
 「そうじゃろ? フォフォフォ」

 さて、社長の言葉には、正しいことと間違っていることが一つずつ含まれています。

 まず、与党と野党にそれぞれ献金するというのは、正しい方針です。献金献血と違って慈善事業ではなく、立派な投資なのでリスク分散をする必要があります。こういうのを「コウモリ」とか「八方美人」とか陰口を叩く人もいますが、それはおかしい。別に民間企業が特定の政党と心中する義務はありません(その方が不健全で怖い)。

 一方、後半は間違いです。いや、完全な間違いではないのだけど、残念ながらほとんど効果は期待できません。企業は政治家個人には献金できないので、仕方なく政党に献金していますが、そのお金が党内でどういう風に配分されるかはブラックボックスです。普通は、若手にそのまま流れ込むとは考えられない。「上から」順に配られるのが穏当でしょう。だから、初芝献金が野党の若手に流れる可能性は、ないとはいえないけど低いし、第一まわりくどい。社長の頭にも、きっと「有望な若手」の具体的な顔は浮かんでいない。

 先日も書いたように、企業なり労働組合からの献金は、構成員の利害を正しく反映しないという点で、不効率です。そして、政治家の側から見ても、上述の理由から不効率です。二重に不効率なのが今の日本の政治献金です。

 この状況を変えるには、繰り返しですが、ネット経由の個人献金を活性化させることです。そうしたら、野党の有望な若手も直接、支持者から簡単に献金を集められる。お互いにとってメリットが大きい。もっとも、それで困る人というのもいるのだけど・・・。