不可視な物の価値

 今朝、テレビでスーパーモーニングを見ていたら、国会議員世襲問題を取り上げていました。この問題は、特に目新しいものではないけど、しかし年々世襲率は着実に高くなっているし、その弊害は大きくなる一方なので、放っておくわけにもいきません。何をもって「世襲」と見なすかの定義はぶれがあるのですが、番組では、直接政治家の卑属である場合のほかに、政治家の子女と結婚する「婿入り」の形で受け継いだ場合も含めていました。この定義によれば、現在の閣僚の半数が世襲議員なのだから大した高率です。これはもう、世襲でないと国政で影響力を及ぼすことは望めない。

 世襲議員が有利とされる理由は、いわゆる三バン(地盤=支援集団、看板=知名度、鞄=金)という膨大な資産を相続できるからです。「世襲政治家は100m走を60mからスタートするようなものだ」と言っている政治家がいるそうだけど、正直な実感でしょう。世襲議員はこぞってインタビューを拒否していたけど、そりゃ後ろめたくて何も話せまい。ただ一人、山本一太が「何かしら制限を加えるべき」と発言していたのは、自己 PR もあるだろうけど、なかなかの度胸でしたよ。

 本来、親から子へ財産が受け渡される場合、相続税がかかります。その原則に従えば、世襲議員が受け継ぐ三バンも相続資産と見なすべきなのですが、しかし、土地や現金と違って、地盤や看板は目に見えないため、その価値を査定できません。そのため、現在では相続税の対象になっていない。こういう目に見えない財産のことを、無体財産intangible assets)と呼びます。狭義には著作権特許権を指しますが、俗に言う「のれん」とか「ブランド」のようなイメージ、「ノウハウ」のような技術知識までひっくるめることもあります。

 この無形財産の相続をスルーさせることの問題は、法の下の平等に反するため違憲の可能性があることです。日本国憲法第14条の条文は次のとおりです。

すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

 もちろん、世襲議員は、何かしらの社会的制度によって守られているわけではないので、その意味では明示的な差別はありません。しかし、実質的に存在しているのなら同じことです。この問題を解決するには、山本君も言うように何らかの制限をかけるしかないでしょう。具体的には、三バンの現金価値を算出し、相続税を課すのです。無形財産の評価は、技術的には十分やれますから(諸君「見える化」は得意だろう?)、最大の問題点は世襲議員の反対です。

 この「相続」という現象と「相続税」という制度については、また日を改めて詳しく書いてみたい。これも考えてみると結構不思議な現象で、考え始めると奥が深い。