やっぱりジンアイは若くてピチピチなのに限る:『象の背中』

 日曜ゴールデン劇場で『象の背中』という映画をやっていたので途中から見ました。人品卑しからぬ大会社の部長さん(役所広司)が肺癌にかかって余命半年と宣告されるお話。黒澤明の『生きる』みたいなストーリーかな、と思って見ていると・・・・・・あれ、部長さん、ジンアイいるんですか。それも随分若くてお綺麗な。さすが部長、我が社の島耕作と言われただけのことはありますな。

 あれあれ、ちょっとジンアイのところ通いすぎじゃありませんか。しかもジンアイには癌のこと話すのに、奥さんには黙ってるんですか。なんかいい具合に本妻が軽んじられてるような気がするんですが、気のせいでしょうか。迷惑かけた取引先に土下座するよりも先に、奥さんに土下座した方がいいんじゃないですか。いやまあ、若輩者の個人的な感想なんですけど。

 しかも奥さん、最後に全て受け入れて許してくれるんですか。それはまた菩薩のような方ですな。普通なら生ゴミの日に捨てられても文句は言えませんぜ。それで部長また、「こんど生まれ変わっても君にプロポーズする」とかのたまうわけですか。私はまだ人生修養が足りませんで、そこまで面の皮の厚いセリフよう言えませんわ。これが悟りの境地というやつでしょうか。

 ・・・・・・一体なんなんだ、この自己批判の視点がごっそり抜け落ちたオヤジ礼賛映画は。共産党プロパガンダ映画よりタチが悪い。と思って調べてみたら、原作が秋元康なんですね。それで納得。渡辺淳一とならぶおじさん期待のイデオローグですものね。やっぱジンアイは若いのに限ります。

 こんな映画、それこそフェミニズム批評によって「無反省な父権制イデオロギーに貫かれた男の身勝手さを浮き彫りにしている」とか一刀両断されるのが相応しい(もうされてるようだけど)。日本のフェミニズムも最近零落が止まりませんが、こんなのをのさばらしておいてはいけない。斉藤美奈子小倉千加子あたりに筆誅を下してもらうことを望みます。