番宣:町山智浩『未公開映画を見るTV』「ジーザス・キャンプ」後編

 本日23時から TOKYO MX で「ジーザス・キャンプ」の後編が放映されます。先週の前編だけでも十分に衝撃的な内容でしたが、後編はもっとすさまじい内容が展開されるでしょう。福音派の狂信的伝道師ジェリー・フォルウェルの演説が聞けると思うと、今から胸の鼓動が高鳴ります。ああ早く見たい。

 番組の中では時間の制約もあって、福音派=いかれたキリスト教原理主義という簡単なくくり方で済ませていますが、実際には福音派もそれほど一枚岩ではないし、本当に原理主義的な一団というのは多くない。それに、もともと彼らは現世を重視していないので、政治的にもノンポリで、世間から「変な信仰をもったどうでもいい連中」として捨ておかれていました。その彼らがなぜ共和党の大票田となり、ブッシュ政権のときに絶頂を迎えることになったか、という経緯は飯山雅史『アメリカの宗教右派』に詳しい。

 しかし今や有力な指導者だったフォルウェル牧師は死に、ホワイトハウス民主党に奪われ、福音派に否定的なマケイン議員が共和党の多数派を束ねるにいたって、彼らの政治的権力も下り坂を転げ落ちています。その意味で、このドキュメンタリーが日本で公開されるタイミングは2年遅かったけど、でもまだ一定の勢力を保持していることに違いはないので、今からでも遅くない。配給会社はすぐに日本で公開するべきでしょう(宣伝部長は青田典子で)。

 これから福音派が辿る道は、私は大きく三つの路線があると思っています。一つは、再び政治の表舞台から姿を消し、昔のように南部で内輪のコミュニティを作ってひっそり暮らす(これが一番、他の人々に迷惑をかけないのでありがたい)。もう一つは、政治勢力を保持したまま、日本の創価学会のように世俗化していく道。これも決して悪くない。途中で色々な軋轢は生まれるでしょうが、アメリカ人はそういうのを乗り越えるのに慣れている。最後三つ目は、第二のブッシュを見つけて再び世界を相手に宗教戦争を仕掛けに行くこと。この可能性も、ないとは言えない。今はオバマ率いるリベラル(知性主義)が反撃に出ているけど、経済対策などで成果をあげられないと再び知性主義への反発がぶりかえすでしょう。アメリカはいま、経済だけでなくイデオロギー的に見ても薄氷の上を渡っているのです。