選択の自由なんてただの幻想です。お偉方にはそれが分からんのです

 小谷野さんが『美人好きは罪悪か』で誉めていた山崎朋子『サンダカン八番娼館』を読んでいます。非常に読ませる筆力と迫力があり、ぐいぐい読み進んでしまう。こんな良い本を今まで知らなかったのが悔しい。持つべきものは頼りになるレビュアーです。

 しかし、日本女性底辺史としての史料価値は一級だけど、売春の主因を貧困に求める理論的スキームはさすがに古くて、現状に合わなくなってしまっている。まあ1970年に書かれたのだからこれは仕方ありません。結局、貧困が消えても売春が消えることはなかったので、この貧困真因説はもう説得力を失って久しい。著者の山崎さんは現在の「豊かな売春」について、どういう捉え方をしているのだろう。興味があるところです。どこかでコメントしているのでしょうか。