CSA:アメリカ連合国

 先週の日曜の『松嶋×町山 未公開映画を観るTV』は『CSA:アメリカ連合国』でした。もしも南北戦争で南軍が勝っていたら・・・というSFチックなドキュメンタリー。日本で作るなら「もしも明治維新が失敗して幕府軍が勝っていたら」という感じでしょうか(その場合、日本はフランスの植民地になっていたでしょう)。

 この映画から得られた教訓:南北戦争北軍が勝ってくれて本当によかった。

 もっとも、仮に南軍が勝利していたとして、このドキュメンタリーが空想するように奴隷制がその後も長続きしたかは怪しいものです。というのも、奴隷はプランテーションでの単純労働力とかに使うには低コストで便利だけれど、工場労働者やホワイトカラー知識労働者には向かない。そういう近代的な産業に従事する労働者を育てるには、高い教育と規律を教える必要があります。そのためには奴隷制はむしろ邪魔になる。アメリカの北部が奴隷解放に踏み切れたのも、早くから工業化していたので奴隷制の必要が少なかったからです。

 だから、国家がある程度のレベルまで近代化したら、奴隷制というのはだんだん非効率になっていくシステムです。それでも単純労働がなくなるわけではないので、今度は奴隷制を国外にアウトソースする仕組みが生まれたりするけど、これもそのアウトソース先の国々が発展してきたら立ち行かなくなる。長い目で見て、結局、奴隷制は地球が豊かになるにつれて消えていくものだったのだと思う。

 追記:奴隷に向かない仕事はもう一つあって、それは兵士・軍人です。ナポレオンは、国家のために熱狂的な戦意をもって戦う自由な市民の軍隊が、雇われ傭兵の軍隊より圧倒的に強い、ということを示しました。仮に奴隷を兵士にしても、いやいや戦場に行くのだから戦意なんて高いはずがない。だから近代国家は強い軍隊を持つためにもやはり奴隷制を廃止せざるをえなかったでしょう。