大数と少数:解答・解説

 さて諸君、それでは解答と解説だ。問題をもう一度見直したい人はこちら参照。

 私の出した答えは以下の通りです。

景品交換を繰り返す場合:Bを選ぶ。
景品交換を1回しかしない場合:どちらでも好きな方を。

 交換を繰り返す場合、回数が多ければ多いほど、得られる商品券の金額は期待値に近づいていきます(大数の法則)。Bの期待値は 5000 円のままですが、Aの期待値は 3000 + (6000 * 1/20) = 3300円です。1ポイント当たりの価値は、Aketiさんが計算してくれたように、A:3.7円/ポイント、B:5円/ポイントとなります。そのため、回数を多く繰り返すほどBを選ぶのが有利です。

 一方、この期待値というのは、別にある1回の交換で得られる金額そのままを意味するものではありません。交換が無限回繰り返された場合にこの値に落ち着くだろう、という理論値です。逆に言うと、交換回数が少ないほど平均獲得金額が理論値から遠のく確率は、大きくなります。母集団が少ないほど偏りは大きい可能性が高い。

 それゆえ、あなたがハイリスク・ハイリターンを好む投機的な性格なら、一度だけという条件つきで、Aに賭けてみるのもいいと思います。もしかしたらスペシャルラッキーな一日になるかもしれません。

 さて、これで交換する側としての話は終わりなのですが、この話を、視点をカード会社側に移して考えると、また違った側面が見えてきます。実は Aの選択肢を入れておくことで、カード会社は必ずメリットを得られるのです。なぜかというと、全国規模で考えれば、必ず一定数はAを選ぶからです。Bの選択肢を見落としたとか、ギャンブルしてみたい気分だったとか、いろんな理由から、Aを選ぶ人は(比率としては 2:8ぐらいの少数派かもしれないけど)必ずいます。Bの選択肢しか用意してないと、全員がBを選んで終わりですが、Aがあることで、カード会社は確率戦を仕掛けられるようになる。

 そしてこの確率戦は、集団規模をある程度確保できれば、カード会社にとっては必勝のギャンブルになる。大数の法則によって、胴元は絶対に負けないからです。JRAもJKAも生命保険会社もみずほ銀行もパチンコ屋も、みんなこの法則によって 限りなく100%に近い確率で勝つ。

 大数の法則を利用する手腕にかけては、カード会社も一流です。きっとAの選択肢は、かなり計算された上で景品リストに含まれているのだろうと、私は思います。