慈善的消費者金融

 今週、ワールド・ビジネス・サテライトを見ていたら、日本の貧困層を救済するためにマイクロファイナンスを取り入れる活動が紹介されていました(動画)。

 こういう社会的厚生の向上を主眼としたマイクロファイナンスの中では、途上国で貧困層の自立を支援するために作られたグラミン銀行が有名です。普通なら金融機関が相手しないような貧乏人相手に、無担保で小額を高利で貸すという特異なスタイルを採用しながら、ビジネスとしてもうまくいくことを実証して大きな反響を呼びました。創設者の経済学者ムハマド・ユヌスは、その功績によりノーベル賞を受けている。

 日本では 2006年の貸金業法の改正により、グレーゾーン金利が廃止されたことで、消費者金融が打撃を受けました。これにより、やや高利の短期融資を利用していた人々が苦しい立場に追い込まれています。マイクロファイナンスは、こういう人々に 12 〜 15% 程度で数十万円を貸し付けるので、超高利の闇金に走るのを阻止する受け皿として効力がありそうです。

 でも、日本でグラミン銀行と全く同じモデルが成功するかどうかは、よく分かりません。後者がバングラデシュで成功したのは、ターゲットを農村の女性に絞るという着眼点が秀逸だったからです(融資対象の9割が女性を占める)。農村の女性たちは、沢山の子供を抱えているし、都会で生きる術も持たないので、借りた金を持ち逃げできない。しかも5人組を作らせて、相互に監視させる仕組みも導入しています。男に貸すとあっという間にギャンブルや酒に消えたり、ドロンする可能性があるので怖くて貸せない。

 逆に言えば、貧乏人に金を貸すというのは、それぐらい厳しくいかないとビジネスとして成立しない、リスキーな事業なのです。

 日本の場合、バングラデシュよりも圧倒的に人の流動性が高い。そのため明らかに踏み倒されやすい。番組でも、出資を打診された生協の職員が「ちゃんと回収できるんですか?」と当然の質問をしていましたが、「アフターケアはしっかりしてます」という曖昧な答えにとどまっていた。この「アフターケア」をどう工夫するかで、長期的に続くかどうかが決まる。

 ・・・とここまで書いて思ったのですけど、こういう慈善的なマイクロファイナンス消費者金融って、何が違うのでしょうね。どちらも短期で小額をやや高利で貸す。そして取り立ては鬼のように厳しい。違うのは動機だけで、やってることは同じ気がするのですが、だったら別に法律改正なんかせずに消費者金融に任せておけばよかったのに。