公共事業としてのセンター試験

 先週の土日はセンター試験でした。受験生にとっては人生を左右する 2 日間だったでしょうが、センター試験というのは、見方を変えると巨大な公共事業という側面を持っています。受験生から集める受験料(検収料)だけでも毎年 100 億前後にのぼり、多くの人間とモノが動く一大産業を形成しています。

 一人 1万8000円も受験料を取っておきながら、採点結果を通知せずに学生に自己採点させる、トラブルが多いなど、高いわりにサービスが良くないという批判もあるようですが、正味な話、センター試験の 100 億円は何に使われているのでしょうか。

 センター試験を運営しているのは、独立行政法人大学入試センターです。同センターは、毎年財務情報を公開していて、Web 上でも直近 10 年の収支を見ることができます。

 そこで業務費の上位に来る支出項目を調べてみると、2010 年の上位三つは、監督者等経費(26億)、賃借料(19億)、印刷費(17億)が群を抜いており、これだけで業務費の約 60 %を占めます。賃借料というのは、おそらく会場を借りる費用なのでしょうが、グラフを見ると分かるように、この項目は 2009 年から急に増えています。この理由は、連動して「外部委託費」が増えていることと、対照的に「材料消耗品費」が減っていることから、運営業務を何らかの形で外部委託していることが関係しているのでしょう。




  
 「印刷費」は、問題用紙や回答用紙を人数分用意しなければならないので、安定的に高いのですが、経年で見ると減少傾向にあります。印刷会社の経営努力とデフレが原因でしょうか。ここを劇的に減らすには、問題用紙を全部 iPad にするぐらいのことをやらないとだめでしょう。

 しかし、なんと言っても支出における不動のチャンピオンは、「監督者等経費」です。人件費ですね。いやあ高い。これを見ると日本は本当に人件費が高いことが分かります。特にセンター試験では、大学教師を総動員するうえに、休日出勤&夜勤手当てを出さなければならいので、ちょっとやそっと他の支出項目が増えたぐらいでは王者の牙城は揺るがない(2008 年の「材料消耗品費」が寸前まで王者を追い詰めるいいファイトを見せましたが、一歩及ばなかった)。

 というわけで、「センター試験の受験料は何に使われているのか?」に対する答えは、「先生のアルバイト代」でした。これを減らすには、もっと安い人件費で可能な民間の人材派遣業者などを使う、英語の試験は TOEIC などで代用するなどの対策を取る必要があります。研究と教育が本務の大学教師に試験監督をさせるのも本末転倒な話なので、これは先生方の支持も得られる対策だと思います。センター試験民営化してコストが浮けば、米国の SAT のように年複数回実施するのも夢ではなくなります。

 「どうせ天下り役人が赤坂の料亭で飲み食いしてるんだろう」とか「退職金たんまりもらってるんだろう」という想像をした人もいるかもしれませんが、(そしてそういうのがないとは言い切れないのだけど)、少なくとも全体への影響という観点で見れば無視してよいレベルです。センター試験を安上がりに済ませる秘訣は、先生たちを雑務から解放してあげることです。