悪い狐たち

 「松嶋・町山の未公開映画を見るTV」で取り上げられていた『Foxed Out』の中で、見る者すべてを苛立たせる右翼コメンテータのビル・オライリーが「マーティン・シーンの演技など見たくない。われわれの求める大統領像とは違う」と気炎をあげている一場面がありました。

 もちろんこれは『ザ・ホワイトハウス』のバートレット大統領を指したものです。共和党が政権をとって国を挙げて戦争に突入しようという時期に、インテリで穏健派の民主党大統領のドラマを続けるというのは、状況的にきついものだったでしょう。そのせいもあって、名作だったにもかかわらず『ザ・ホワイトハウス』は打ち切りになってしまった(それでもシーズン7まで続いたのは日本ドラマの感覚からすれば長寿ですが、アメリカのTVドラマにはもっと長寿命なのがいっぱいある)。もう2年耐えられたら、政権交代で風向きが変わったのに。残念です。

 民主党オバマ大統領が誕生して一時的視聴率を落としていた Fox News は、いまは逆に反オバマな人々の憩いの場となって、勢いを盛り返してきているそうです。まあそれもよく考えたら納得のいく話で、アメリカは国民の半分が共和党支持者なんだから、オバマを嫌いな人たちが半数はいるということです。日本にいるとあまりそういう人々の姿が見えないけど、アメリカの政権与党は、気を緩めたら爆発する不発弾を抱えているような緊張感をもって臨んでいる。日本も民主党が政権をとったら、そういう緊張感が生まれるかもしれません。