安野モヨコ:『働きマン』4巻

 この巻はいい話が多かった。片桐さんや波多野さんのような真面目で優秀な、それゆえに損な立場に置かれてしまう人への「どうにもならない」という諦念交じりの同情が溜息を誘う。主役の松方さんも、三十路を前に悩み多き人生を送っている。

 優秀で根が真面目だから頑張ってしまい、周囲からも頼りにされて次々に難しい仕事が振られる。失敗したときも、自己評価が厳しいので周りを責める前に自分で全責任を抱え込んでしまう。そしてその反省を糧に実力をのばしていく。でも、そんなことを繰り返していくうちに、いつしか仕事への動機も情熱も失われ、体か心(または両方)を壊して「燃え尽き」と呼ばれる段階に突入してしまう。そうなると、もうデフレ・スパイラルから逃れる術は多くありません。その人が職場を去るのは時間の問題です。ある程度の期間社会で働いていれば、繰り返し見かける光景です。

「人が・・・いないんですよ。ちゃんと記事やれる人間が少ないから仕事が集中する。やればやるほど仕事増やされてやんない奴と給料は一緒で。だったら楽しようって考えても仕方ないでしょ。真面目にやってる方がバカみたいじゃないですか。」

 この言い分に反論することは、難しい。特に、仕事の評価軸が「給料」という一つに収束しつつある今のような時代は特に。きっと私たちは、仕事に対する評価軸をもっと増やさなくてはいけない。でも、それもまた大変なことだ。

 『働きマン』は10月からドラマ化されるそうです。主演は『私たちの教科書』でも見事な演技を見せた菅野美穂。こいつは要チェックやで。