プライバシーください、そしたらあなたを幸せにします

 Googleストリートビューによるプライバシー侵害(未遂?)が盛り上がっています。Googleのやることは相変わらず遠慮会釈ない。本音を言えば顔のボカシだって入れたくなかったのでしょうね。

 いま、Googleにとってはプライバシーという概念が邪魔でしょうがないはずです。それは、Googleが利用者の個人情報を喉から手が出るほど欲しがっているからです。「何で検索エンジンの会社がそんなものを欲しがる?」と思うかもしれませんが、これはひとえにGoogleの収益の柱が広告だからです。「Googleは収益の面から見れば広告代理店」(佐々木俊尚)なのです。自動車や不動産、化粧品の会社といった広告主と利用者を適切に結びつけるためにも、利用者の個人情報をできるだけ細かく把握したいのです(40代独身の男性に女性化粧品の広告を打っても無意味だものね。でも今までの広告はこういう無駄が多かった)。

 2005年に、Googleはサンフランシスコ市に「無料でインターネット接続できるインフラを提供する」という衝撃的な提案をしたことがあります。インターネット接続を有料で提供している既存のプロバイダはこれに震撼したのですが、なぜGoogleがこんな大胆な無料作戦を展開できるかといえば、これもやはり収益を広告から得るつもりだからです。つまり、利用者は無料でインターネット接続できるかわりに、利用登録の際に住所や年齢、年収、家族構成といった個人情報をGoogleに提供する必要があるのです。いわば「お金の代わりに個人情報をくれ」ということ。「そしたらあなたはタダでインターネットが使えるし、広告主も適切な広告をあなたに届けられる。もちろん興味がなければ商品を買う必要はない。誰も損しないでしょ」。

 私たちに任せてくれれば、悪いようにはしない。みんな幸せになれる――Googleはたぶんそう考えてる。Googleはいま、どの程度のプライバシーに抵触すると、人々がどんな反応をするのか、小出しに実験しているのではないのだろうか、という気が私にはします。今回の一件にもそういう目的があると言われても、私は驚かない(根拠のない憶測ですけど)。

 このGoogleの無料戦略が順調にいくと、既存のプロバイダなどは商売あがったりになって次々に廃業していくことでしょう(無料でインターネット接続できる方法があるのに、誰がわざわざ金を払う?)。そうすると、Googleマイクロソフトがかつて実行して成功したように、プラットフォームを独占できるようになる。でもそのとき、やはり同じように独禁法にひっかかることにもなると思うのだけど、これをどうやって回避するつもりなのだろう? 絶対に何か方法は考えているはずだけど、私には見当がつかない。