荒野の市場

 米国の大手スーパーチェーンウォルマートの傘下にある西友が20店舗の不採算店を閉鎖するというニュースが入ってきました。

 ウォルマートもカルフールもコケて、こういう郊外に大規模なショッピングモールをどーんと展開して大量に安い製品を売りさばくというタイプの商売は、結局日本にはあまり根付かなかった、というのが10年間の実験の結果のようです。アメリカ得意の物量作戦をもってしても、日本人の多品種少量消費の性向まで変えるのは、なかなか難しいようです。いぜん西友の従業員の人と話したとき、「ウォルマートと組んだのは失敗だよ。そう思ってる人間は多い」とあっさり認めていたのを思い出しました。

 確かに、『ファスト風土化する日本―郊外化とその病理』『下流同盟―格差社会とファスト風土』三浦展たちが告発するように、こういう「一周するだけで3時間かかる」ひたすらだだっぴろいショッピングセンターが、他には何もない国道沿いにそびえる風景が、日本の地方都市を平板化し、荒廃させたという批判的感情を育てる結果にもなってしまった(三浦展はとても読めない書きなぐりも多いけど、この2冊は非常に力が入っていた)。

 「日本のウォルマート」と呼ばれるジャスコは、下妻物語では同情してしまうぐらいこきおろされていたけど、ウォルマートとは少し毛色が違って、ひとくくりにはできません。極端な値下げ戦略はとらないし、従業員の給与水準も高い。外資ほど空気の読めない展開は、これからも多分しないでしょう。どういう風に生き残るつもりか、興味深い。