Experience is the best teacher, but ...

 定額給付金は、国民の圧倒的多数の反対を受けながら、いよいよ実施されます。これがうちのお偉いさんたちが知恵を絞った経済政策かと思うと、とほほ感に包まれます。でも、今回ひとつ不幸中の幸い(というのも妙な表現だけど)だったのは、国民の多くが給付金に反対している事実が明らかになったことです。国民の7割が反対するという世論調査には驚いた。どうせ遠からず増税が控えているのだから、一時的に小金をもらっても無駄だ ―― 多くの人が冷静にそういう合理的判断を下しているうちは、まだまだ日本も捨てたものではありません。それに、以前のエントリでも書いたように、この給付金という呼び名は間違っています。出所は私たちの税金なので、ただの還付金に過ぎない。いや「埋蔵金」から出るお金だから税金とは別だ、国民の財布は減らないというトンチンカンなことを言う人もいますが、埋蔵金だって税金なのです。ネーミングに騙されて、地面掘ったら出てきたなどと勘違いしてはいけない。国の財産は税収と国有財産の二種類しかないのであり、そこから出たものは、いずれ税収で賄わない限り回復しないのです(国有財産は戦争で領土でもぶんどらない限りほとんど増えない)。

 不況時にバラマキをするのは日本だけではなく欧米でもやりますし、日本でも過去に行われている。その意味では常套手段です。これがなぜまかり通るかと言えば、前も述べたように、徴税システムが、「税金を取られている」という実感を覆い隠すように出来ているからです。源泉徴収をなくし、一度労働者の手元に全額渡してから、税金分を差し引く仕組みであれば、もっとみんな税金の流れについて敏感になる。

 では今回、なぜ日本国民が珍しく拒否反応を示しているかといえば、それも簡単な話で、過去のバラマキに全く効果がなかったことを経験によって学習したからです(代表はふるさと創生事業)。「経験は最良の教師だが、授業料が高すぎる」と言ったのは、カーライルでした。実にそのとおりだけど、どうせならそこに「経験は唯一の教師でもある」という一文も付け加えるべきでしょう。日本人は学習しました。他国の人々だっていずれ気付く。そのときには、もうバラマキに効果は無い。

 というわけで皆さん、給付金をもらったとしても、それは元々、自分の財布にあった1万円であって、それを政府が抜いて「ほら恵んであげよう。これで何か消費して景気の底上げに貢献しなさい」と言っているだけだ、ということを忘れないでください。朝三暮四の猿みたいにはしゃがないように。