経済

公共事業としてのセンター試験

先週の土日はセンター試験でした。受験生にとっては人生を左右する 2 日間だったでしょうが、センター試験というのは、見方を変えると巨大な公共事業という側面を持っています。受験生から集める受験料(検収料)だけでも毎年 100 億前後にのぼり、多くの人…

ヨドバシカメラとアップルストアの違い

The Economist の記事より。("The cost of a free ride") 皆さん、ネットショッピングはするでしょうか? する、という人たちにお聞きしたいのですが、こんな行動を取ったことはないでしょうか。 まず、下見をするために、実物を置いてある店舗まで出かけて…

階級社会アメリカ

New York Times の記事より。("Harder for Americans to Rise From Lower Rungs") 日本はいま、階層が二極化しているだけでなく、階層が固定化される社会に向かっていると言われています。親が貧乏だと、子供も満足に教育を受けられず貧乏なまま人生を終え…

『Economist』:イランの市場原理主義

今年の6月、重い腎臓病を抱えた堀内利信医師が暴力団から腎臓を買ったという事件が起きました。テレビをはじめマスコミでも大きく取り上げられたので、記憶されている人も多いと思います。 日本では臓器売買は違法なので、その点で法を犯した医師の行為は咎…

借金はどうやって返せばいいか

日本の政府債務は、943兆円強(2011年6月末時点)と、近く 1000 兆円を突破する勢いで増え続けています。また新しく首相になった野田氏はかつてから財政タカ派として知られており、増税による財政健全化に意欲を見せています。いよいよ大増税次代の到来が近…

原発は本当に安価なエネルギーか

先週、イタリアでは原発再開の是非を問う国民投票が行われ、反原発票が 9 割を超える大差で否決されました。これに対しては、反原発というより反ベルルスコーニ政権の気運が高まったことを示すという評価もあるようですが、ともあれ、ドイツに続きイタリアも…

年金は人生の「残念賞」

今週、民主党がマニュフェストで掲げていた年金の傾斜配分方式の具体案が明らかにされました。「社会保障と税の抜本改革調査会」(会長・仙谷由人官房副長官)がまとめたもので、骨子としては「現役時代の平均年収が 600 万円を超える人から次第に減額してい…

雇用創出の画期的方法

昨日のエントリで書いたエコカー補助金の話に、ちょっとだけ補足を。 補助金制度は先月で終了しましたが、エコカー減税の方はまだ続いています。TV コマーシャルでも、各社とも「まだ減税が残っている!」と連呼しているのでご存知でしょう。 ところで皆さん…

『Economist』:エコカー増税

先月末で終了したエコカー補助金は、もともと環境保護対策というより、業績悪化に苦しむ自動車業界の救済措置という性格の強いものでした。直嶋経産相が「リーマン・ショック後の異例の措置」と認めるように、自動車業界が好調であれば実施されなかったであ…

介護士よりも借金取りの方が社会の役に立っている

ギリシアの財政危機は、EU と IMF が支援策を明らかにすることで、落ち着きを見せつつあります。しかし、各国とも心中は穏やかではない。それは、経団連の御手洗会長が、この問題を他山の石と評したとおり、ギリシアの財政がここまで悪化した原因は、ギリシ…

『Economist』:送り主に返却されたし

日本の政治家は、意外に議論好きなのかもしれない。ゆうちょ銀行の預金受け入れ限度額を2000万円に引き上げるという亀井大臣の案が明らかにされたとき、何人かの大臣はこれを公然と非難しました。亀井氏も負けておらず、テレビで思い切り財務大臣を罵倒して…

美人の経済学

実家に帰っていたとき、ちょうど今年就職活動をしている弟と、就活状況について色々話をしました。私のときも氷河期と呼ばれる厳しい時期だったけど、弟も難航しそうな様子。兄弟揃ってタイミングが悪いのも困ったものですが、今年は団塊の世代が退職を始め…

企業は存在しない

先週の WBS でコメンテータのフェルドマン氏が、「派遣労働を禁止すれば海外に労働力が流出して空洞化を招くだけだ。経済合理性を無視した政策は絶対にうまくいかない」と言っていて、わが意を得たりの気分でした。いま日本で見る価値のあるニュース番組は W…

『Economist』:未来の価値

地球温暖化が広く公共の議題となって以来ずっと、経済学者は一貫して環境保護論者の立場を脅かし続けてきました。両者が対立するのは、温暖化の緩和が非常に大規模な投資を必要とするからです。一般に、政府や企業が投資を行うとき、重要なのは回収率です。…

試験に出る経済用語

今月3日、労組連合が非正規労働者の処遇改善を正式な目標にもりこむという発表をしました。これまで非正規労働者の犠牲の上に正規労働者が胡坐をかいてきた、という差別の構造を自覚して、その改革に乗り出そうという意識が芽生えたのは、前進と評価できます…

派遣社員がいなくても大丈夫

城繁幸氏のブログ経由で知ったのですが、なるほどねえ、そういうやり方があったのか、と感心しました。ヤマハ発動機とトヨタが正社員の貸し借りをしている、というニュースです。短いので全文引用させていただきます。 ヤマハ発動機は6日、正社員約270人…

相対と絶対

格差という言葉は、ここ数年の日本の経済政策を考える上でのキーワードになっていますが、でもこの言葉が実際に何を意味しているか、あまり明確ではありません。ただ、少なくとも格差というのは、あくまで相対的な概念で、その点で「食えるか/食えないか」…

『Economist』:がんばれジャイアンツ

1996年、ビル・クリントンは彼の言葉の中でも最も世に知られた一言を発した ―― もう大きな政府の時代は終わった、と。もしかすると、続けて大企業の時代も終わった、とも言っていたかもしれない。事実、20世紀の資本主義そのものとみなされていた大企業は、…

税金で行こう

今朝『サンデー・ジャポン』を見ていたら、ゲストの渡辺喜美さんが、今月15日から始まったエコポイントについて、「ポイント制にせず、消費税分などを現金キャッシュバックにすべきだった」と的確な批判をしていて、わが意を得たり、と膝を叩きました。さす…

1万5000円ください

定額給付金が届いた・・・・・・と思ったら、まだその申請書類が届いただけでした。この書類を送ってようやく振込みで払われるとのこと。 届くまでは実感なかったけど、本当にこんな無駄なこと国をあげてやったんだな。全体で総額2兆円の規模といわれていますが、…

『Economist』:金持ちの首を獲れ

エジンバラでは銀行の窓に石が投げられ、フランスでは労働者が経営者を「誘拐」する。ワシントンでは90%の追徴課税が提案され、ロンドンでは、サミットに出席するG20の指導者の到着を暴動が出迎えました。政治と世界経済に対する社会の態度に、大きな変化が…

分かりにくさの効用

前回のエントリで、「ブラックな部分がないと商売はできない」という話を書きました。お客から見て、難しくて面倒で、曖昧なところがないと利益を乗せにくいからです。ホワイトなところに利益を乗せると、「え、その作業にそんなかからないでしょ。高すぎだ…

更改案件

私が私淑する師匠の一人、池田信夫さんがメディアの取材で雇用問題について語っています。要点としては、普段彼がブログで語っている「正社員の雇用規制緩和と人材流動化こそ、見かけに反して本当の雇用対策」というものなので、新味はありません。こないだ…

公平とは何か

先日紹介した鈴木さんの本はとても良い本なので、今日も引き続き宣伝に励みます。 『だまされないための〜』が教えてくれる当たり前の、しかし意外に見落とされがちな事実は、年金が本質的に保険だということです。実際、徴収されるときの名目は「年金保険料…

アトラスの亡霊

不況真っ只中のアメリカで、一冊の本が売上を伸ばしているそうです。オバマ大統領の演説集ではありません(それも売れてはいるが)。50年以上も前に刊行された、一部では古典と呼ばれている本です。アイン・ランド『肩をすくめるアトラス』。知っている人は…

痛みのない労働力移動

昨日、テレビのチャンネルを回していたら久々に『あいのり』がやっていたのでしばらく見ていたら、デンマークの社会制度を絶賛していました。いわゆる北欧型福祉社会の一つで、出産、医療、介護、教育、葬式まで全部タダ。失業保険は就業時の9割の給付が数年…

日本経済を救うホープは誰か

数年前の年の瀬、地元に帰って学生時代の同級生と小さな忘年会を開いていたときのことです。何の話のつながりでそうなったのかよく覚えていませんが、自分たちは物欲の少ない世代だ、という話が出たことがあります。車にも旅行にも美食にファッションにもさ…

ねずみたちのジハード

最近、マドフと波和二と、日米で相次いで大物ネズミ講のボスが逮捕される事態となりました。ねずみ講は、正式には無限連鎖講と言いますが、これは下位会員の金品を上位会員の配当に回す純粋なタイプの連鎖講を指すもので、実際には会員が金品の再販売を行っ…

Experience is the best teacher, but ...

定額給付金は、国民の圧倒的多数の反対を受けながら、いよいよ実施されます。これがうちのお偉いさんたちが知恵を絞った経済政策かと思うと、とほほ感に包まれます。でも、今回ひとつ不幸中の幸い(というのも妙な表現だけど)だったのは、国民の多くが給付…