理事長のボラボラ旅行記

 さて、行ってきました。「太平洋の真珠」ことボラボラ島。予想以上に素晴らしい場所でした。行く前は「えー、遠いしちょっと面倒だなあ・・・」と感じる部分もなくはなかったのですが、帰ってきた今は「早く来年の夏になれー」と早くも念じずにはいられないほど虜になってしまいました。それでは、とりとめない旅行記のはじまりはじまり。



日本からボラボラまで
 成田からタヒチパペーテへは直行便が出ています(運が悪いと関空経由の便になるのでチェックしておきましょう)。時間は大体12時間ほど。感覚的に日本+5時間でタヒチ時間になります(日付は一日ずれるけど)。そのため到着時に時差はほとんど感じません。反対に帰国後には少し時差ボケになります。

 多くの人はエア・タヒチ・ヌイの飛行機に乗ることになるでしょう(今でもエール・フランスはあるのかな?)。サービスや機内食は、悪くありません。靴下や耳栓もくれます。ただし機内が非常に寒いので、必ず長袖を持っていきましょう

 機内に限らずこの長袖がタヒチでは大活躍します。というのも、南半球なので8月は真冬。朝夕はけっこう冷えます。常夏の国と思ってたかをくくっているとえらい目にあいます。私の場合も、成田の第2ターミナルに入っているナイキで買った長袖が大活躍でした。午前中に海に入ったときは、あまりの水の冷たさに「どこの国の軍事訓練ですか」と思ったものです。

 パペーテからボラボラへは、国内線で2時間ほど。そこからは投宿先のホテルによって違いますが、私が今回泊まったホテルボラボラの場合、さらに船で20分。国内線は古めのプロペラ機です。離陸のときは「よっこらせ、ぶいーん」、着陸のときは「っとっとっと、どすこいどすこい」という感じのレトロな飛行機です。日本のジャンボに比べてかなり揺れるので、乗り物に弱い人は酔い止めを持参しましょう。

 タヒチの通貨はパシフィック・フランですが、日本で換金する必要はありません。現地の空港でできますし、その方が日本でするより良いレートで換金できます。私は両方で試しましたが、日本:0.65、現地:0.69でした。この数字はタイミングによって変わるでしょうが、現地のが有利なのは変わらないはず。

エア・タヒチ・ヌイ。真っ青な機体が目印

タヒチ国内線の土産リストの変な日本語



タヒチの人々
 基本的に、タヒチの人はとてものんびりしています。バス(ル・トラックという)の運行もいい加減。お店の勘定もいい加減。パペーテはそれでもまだ都会的な忙しさがあるけど、ボラボラ島に行くと「ほけー」とした空気が強くなります。滞在中、ジョガーを除いては人が走っている姿を一度も見ませんでした。着いたら「郷に入れば」の精神でタヒチ・モードに切り替えましょう。「タヒチの人たちは、最終的には漁をして果物を採っていれば生きていける自信があるので真面目に働きません」とは現地の日本人の方の話。ということは、大した産業もないということも意味するので、日用品の多くを輸入に頼る「典型的な輸入国家」だそうな。良くも悪くも海という観光資源と一蓮托生な国なのだな、と思う。

 そういえば、滞在がちょうど北京オリンピックとかぶっていたのだけど、タヒチのどこにもオリンピックの「オ」の字もありませんでした。ガン無視です。ホテルの娯楽室に唯一のテレビがあって、オリンピックを放映していましたが、誰も見ていなかった。フランスを応援する気もなさそう。日本や中国で問題になっているようなナショナリズムとは無縁の様子です(もっとも、昔は独立運動があったし、今でも燻っているそうなので、日本の沖縄みたいな位置づけだろうか)。




ホテルの設備
 ホテルボラボラ(ガイドさんは「ホテボラ」と略していた)は、ボラボラ島の中で一番古いホテルです。今でこそボラボラ島にもホテルが林立していますが、30年前にはここ一軒しかなかった。部屋数は50強で、とってもこじんまりした鄙びた雰囲気。他の滞在客にも、レストラン以外ではあまり合わなくて、ひっそりした感じです。ビーチもほとんど貸切状態。レストランとバーが一軒ずつあって、食事はおもにここでとります。

 伝統があるということは、裏を返すと設備は古いということで、部屋にテレビも時計もPCもありません(これは半分はポリシーによると思うけど)。私の泊まったプールファレ(こちらのマップの24番)でもシャワーの蛇口がゆるくてずっとちょぼちょぼ流れていました。別に不自由はないのですが、ピカピカの近代的なホテルが好みなら避けた方がよいでしょう。大規模なプールやフィットネスジムなどもありません。ここの最大の魅力は静けさとのんびりした雰囲気と自然環境のよさです。そういうのが好きでないと退屈します。

 今年の10月から2年間の改装工事に入るので、リニューアル後は設備も新しくなることが予想されます。リピーターの日本人の方は「楽しみでもあり怖くもあり」と語っていました。確かに、改装してもテレビや時計は置いてほしくないなー。こんな素晴らしい海があるのだから、プールも要らない。ホテル側もその辺はよく分かっていると思うけど……。

 なお、工事期間は「2年」とされていますが、「絶対伸びる」というのが現地ガイドの意見。「タヒチでそんな計画どおり行くはずがないから」と。でも2011年が開業50周年で、ホテルとしてはそれに間に合わせたいので、今回に限って言えばはきっちり終わるのではないか、と思います(現地のタヒチアンはともかく、アマングループが許すまい)。

ホテルの中

桟橋のサンセット

レストランからのオーシャンビュー



ホテルの客層
 多いのは欧米人の年配のカップル。フランス領なのでフランス人が多いのかと思って聞いてみると、遠いしフランスはいま不況なので少ない、との返答。多いのは、距離が近いアメリカや経済好調のイタリアとのこと。日本人も4分の1ぐらいいます。家族連れはほとんど見ませんでした。私が確認したかぎり、フランス人がひと組と、日本人がひと組。子供は複数人を組み合わせると化学反応を起こして大きな音を発しますが、一人だととっても静か。したがって子供の声を聞くことはほとんどありません。




食べ物
 食べ物でおいしいのは、魚、野菜、フルーツ。肉は普通です(たぶん輸入品)。生魚や生ガキも普通に食べられます。私はむしろボラボラにいるときのがお腹の調子がよかった。味付けも割と日本人好みのさっぱりした感じで、中でも一番おいしいのが、ポワソン・クリュ(フランス語で「生魚」の意味らしい)というマリネです。魚の切り身と玉ねぎ、にんじんなど野菜をライムとココナッツミルクで和えるのですが、さっぱりしていて暑い日にピッタリでした。

 ホテルのレストランではフランス料理を出すところも多いようです。長期滞在で食べ続けるとさすがに重たくなってくるかもしれません。

レストランの料理(肉)

レストランの料理(海老)

レストランの料理(デザート)



泳ぎ犬の冒険
 ボラボラ到着日に桟橋で魚にパンをあげていたら、それを隣でじっと見ていた犬がおもむろに海へジャポン! そのまま犬かきで泳ぎ始めた。魚を狙っているようで、実に器用に泳ぎます。さすがに魚のスピードにはかなわないけど、水を全く怖がらない。水深が非常に浅いので、犬でも立てるところもあります。首輪をしていたので、たぶんホテルの犬でしょうが、この日しか見なかった。

ボラボラの泳ぎ犬





マン太郎との出会い
 ホテル・ボラボラの桟橋の周辺は、サンゴ礁が密集していてプランクトンも豊富なため、色とりどりの魚がやってきます。ここをシュノーケリングすると最高です。そして夜には、マンタも至近距離までやってきます。これは古いホテルならではの長所で、新しいホテルではこうはいかない、と現地の人も言っていました。というのも、ホテルを建てる際には、杭をうつために海底のサンゴをかなり破壊するし、場合によってはダイナマイトで爆破して周辺の生態系をこっぱみじんにしてしまうため、魚が戻ってくるまでに数年はかかるとのこと。そのため、最近オープンしたばかりのホテルは設備は最新だが魚は全くいない、という可能性もあるので注意が必要とのこと。こういう情報はパンフには載っていないので貴重な意見です(パンフには「新しくて綺麗なホテル。最新設備が魅力」までしか書かないものね)。

 私の滞在中には、最大で同時4匹のマンタの競演を見ることができました。ヒラヒラと翼をはためかせ、海の中をゆっくり飛ぶように泳ぐさまが優雅です。ダイバーたちが憧れる理由もよくわかる。その中に、一番体長が大きく3mほどあり、海面まで何度も浮き上がって宙返りを見せてくれたサービス精神旺盛な一匹がいて、数日間連続でやってきてくれました。勝手にマン太郎と命名(オスかメスか判別つかないけど、なんとなくオスな気がした)。

 本当に手を伸ばせば触れる近さまでやってくるので、マンタのはねる水しぶきがかかるという、文字通り「水かぶりの席」で見ることができます。マンタの宙返りを50回は見たと思う。これを見てしまったら、もう品川や江ノ水には行けなくなってしまう。

 なお、マンタはとても臆病で、ちょっと驚かすだけですぐに姿を消すので、触ったり一緒に泳ぐことは禁じられています。ホテルの桟橋にも、「日本語で」禁止条項が書かれています。噂によると、かつてマンタと泳ごうとして海に飛び込んだアホな日本人がいて、それ以来しばらくマンタが姿を消したために日本語の看板が設置されたという。真偽のほどは不明ですが、ありそうな話で怖い。

マン太郎の雄姿



サンゴは凶器
 ボラボラの楽しみはなんといってもマリン・スポーツ。特にホテルでゴーグル、フィン、シュノーケルの三点セットをタダで借りればすぐにできるシュノーケリングがお手軽で楽しい。奇跡的な色をした海の中で、鮮やかな色彩の魚たちと戯れられているといつまでも海の中を遊泳していたくなります。パンを片手に泳げばわんさとやってきて「ぱむっ! ぱむっ!」とパンも手も一緒についばんできます。

 ただし、この季節、意外に水温が冷たいのと、風があるので水からあがった後に体を冷やさないため、タオルと長袖のシャツは必携です。また、ラッシュガードという着たまま泳ぐTシャツがあると、保温と日焼け対策に有効です。私が持っていったのはこの二つ。長袖の方がピタッと体にくっついてよかった。

 また、美しいサンゴは毒をもっているので、触ったりひっかいたりすると、クラゲに刺されたようなミミズバレができます。私も一度、太ももをガリッとやってしまって腫れた。こういうときはすぐに洗って消毒液をつけましょう。消毒液は持っていなかったのだけど、ホテルのフロントで借りられました。サンゴの攻撃や砂浜で足を切らないために(一度ガラスの破片も見た)必要になるのが、アクアシューズです。これは本当に重宝しました。普通のビーチサンダルよりもピタッとしているので泳ぎやすいです。

 泳ぎは苦手、という人でもライフジャケットを着けてプカプカ浮いているだけでも楽しいので、是非チャレンジしてみてください。理事長も大して泳ぎはうまくないけど、下手なりに楽しかったです。なお、本格的なダイビングがしたい人には、もちろんアクティビティが用意されています。ライセンスを取るコースもあります。

夕方のビーチ




お土産
 タヒチと言えば黒真珠が有名です。ホテルボラボラの敷地内には、タヒア・コリンズというモーレア島に本店のあるショップの支店があります。同じ値段で他のお店と比較してみたのですが、けっこうクオリティの高い真珠を扱っていました。本店のが多く扱っているそうなので、真珠目当ての方は立ち寄ってみるといいかも。現地で真珠を買うと16%の免税が認められるので、日本で買うよりお得です。

タヒア・コリンズの黒真珠

 真珠以外のお土産は、大したものがありません。上述のように

  タヒチ人働かない ⇒ 産業がない ⇒ 産物がない

 という華麗な三段論法によって、土産物屋にも平気で「アメリカ産のチョコレート」とか「インドネシア産のパレオ」が並んでいます。職場や友達に大量に買っていくお土産を探すなら、パペーテの巨大スーパー「カルフール」がいいでしょう。日本でも幕張に出店していたので有名ですね。

 空港からバスで15分ぐらいだし、フランス語主体とはいえ英語もギリギリ通用します。ここでチョコとかココナッツ石鹸とか買っていきましょう(個人的には、帰りの空港で税関通った後の免税ショップもいいと思う)。カルフールで買ったバニラティーは、香りが芳醇で大変美味しいです。ちゃんと袋がジッパーになっていて保存もきくし。黒地に黄色の文字の缶が目印。

理事長のお薦め:バニラティー

 他にこのスーパーで私が感心したシステムは、「10 Articles」と書いてあるレジ。ここは「10個以下の買い物客専用」の回転の速いレジです。これはなかなか親切で、日本のスーパーにも是非導入してほしい。明らかに何十個もカゴに乗せた男も並んでいたので、自分が主観的に「少ない」と思ったら並んでいいようです。この辺もおおらかで笑えた。あと、レジではデフォルトで荷物袋をくれないので、買うか持って行くかしましょう。みんな節約家ですな。



パペーテには泊まっちゃダメ
 国際線の飛行機が発着するパペーテは、タヒチ最大の都会です。ここは車も人も多くて、歩いている人がタヒチアンでなければ九州の小都市に来たと錯覚します。アスファルトとコンクリートのためか、気温もボラボラに比べて高く、湿度があります。また、海にはビーチが少ないため、泳いだりシュノーケリングすることも難しいです(そのため、みんなホテルのプールで泳いでいる。ここまで来て何が悲しくてプールで泳がねばならんのか)。

 ツアーの中にはこのパペーテの観光が含まれているものもありますが、あまりメリットはないと思います。高いお金と12時間かけてパペーテに来るぐらいなら、普通に九州や沖縄に行った方がずっと安上がりだし言葉も通じます。ガイドさんも「パペーテはこの全てにおける中途半端さがなんとも……」と、言葉を濁していた。

 タヒチへ行くなら離島へ行こう

 これから行くことを考えている人は、このスローガンだけでも覚えておいてください(たぶんこれは、ハワイや沖縄にも当てはまるのではないでしょうか)。ちなみに私の場合、パペーテではインターコンチネンタル・ホテル(空港とカルフールのちょうど中間にある)にデイ・ユースのみで半日だけ利用して、部屋で休んだりカルフールに行ったりしました。これで十分。

 部屋に消火器と見まごう巨大なゴキジェットが置いてあったのが印象的でした。置いてあるということは、「出る」ということなのでしょう。それもきっと南国サイズのすっげえのが。今回は幸いにも遭遇しませんでしたが、ゴキジェットが部屋にあるホテルは初めての経験でびっくりしました。

 なお、余談ですが、パペーテでちょっと面白いと思ったのが、車と歩行者の関係です。パペーテには信号が少ないのですが、代わりに歩行者を見ると必ず車が止まってくれます。これは本当に徹底されていた。標識や信号を作ってルールに頼るよりは、モラルで運用する方針を選択しているわけです。この方法のいいところは、何しろシステムの維持が安上がりなことです。その代わり、「歩行者を見たら道を譲る」という行為が社会全体にとって良いことだという合意が住民の間に成り立っていないと、すぐに無法者が出てきてしまい、維持が難しくなります。タヒチが今後順調に発展を続けたら、モラルが崩れて日本のようにルールへの移行が進むかもしれません。





参考になるサイト
終わりに、これからタヒチ旅行に行く方々に参考になるサイトをいくつかご紹介しましょう。

エア・タヒチ・ヌイ:何度もタヒチへ飛んでいるお姉さんたちの実体験に基づく話が臨場感があって参考になります。

まんぼ〜のつぶやきタヒチに強い旅行代理店「まんぼ〜」さんのワンポイント集。細かいところまでフォローしてくれています。「パペーテは単なる「街」で、見所も少ない」と喝破してくれているのが爽快。その通りなのだけど、大手の代理店はパペーテのホテルにも人を入れなければならない立場上、なかなかこれが言えない。