インフラと競争

 電気代の値上げが決定的となり、全国的に来年から高くなることになりました。本当は原油料金はいま値下がりしていて、上げる必要はないのに、料金の算出方法にタイムラグがあって今ごろ値上げか、というところに報道の焦点は集中していましたが、でも本質的な問題はそこにはありません。電力会社が事実上の独占企業で、競争原理がはたらかないという点に本当の問題がある。でなければ、こんな各社横並びの値上げなんて談合みたいなこと起こりません。1995年から日本でも少しずつ自由化が進んでいるけど、まだ一般家庭が電力を買う業者を選べるところまでは来ていない。東京に住んでれば東京電力から買うしかないし、東北に住んでれば東北電力から買うしかない。だから「てめー、あんまりふざけた真似するともう二度とてめーのところからは電力買わんぞ」と啖呵を切れない。これでは、電力会社があぐらをかくのも仕方ない。

 反対に、アメリカでは電力自由化が進んでいて、各企業がコストカットにしのぎを削って低価格競争をしています。これによって消費者は安価な電力を買えるのだけど、こっちにも問題はあって、それは、アメリカでは過去何度も大停電が起きているのです。古くは1965年の北アメリカ大停電や1977年のニューヨーク大停電。ここ10年で見ても、2000年のカリフォルニア電力危機に、覚えている人もいるでしょう、2003年の北アメリカ大停電。しかも多くが真夏に起きるのだからたまらない。

 その全部が全部、自由競争が原因とは言い切れませんが、でも有力な原因の一つにはあげられています。先進国の中でここまで頻繁に大停電起こす国は、アメリカしかない。

 停電以外にも心配はあって、自由化を進めた場合、企業が不採算だと判断してごそっと撤退することを防げない。それはそれで困ったことになる。社会インフラに関しては、収益性が薄くてもある程度公共サービスと割り切ってやってもらう方が(効率は悪いけど)安全ではあるのです。その場合は、今回のようにちょっと「ムっ」とくる値上げにも、我慢しないといけない。

 皆さんは、どっちのが良いと思いますか?