風と共に・・・

 バラク・オバマがアメリカ大統領に選ばれ、ついにアメリカに黒人(と一般にイメージされている)大統領が誕生することになりました。いまちょうど青木冨貴子『「風と共に去りぬ」のアメリカ』を読み終えたところなので、あの奴隷制支持と差別主義の牙城だった民主党が黒人大統領を輩出したというのは、本当に隔世の感があります。黒人は白人よりも知的・倫理的に劣った人種であり、自由など与えてはならないと固く信じ、KKK団を英雄視していたマーガレット・ミッチェルが今の状況を見たら、何と言うでしょう。潔く自らの黒人観を改めただろうか。それとも「この国の腐敗はついに頂点まで達した」と吐き捨てただろうか。

 もっとも、「黒人初の・・・」という形容詞がついてまわる間は、アメリカでの人種問題が本当に解決される日はまだまだ遠い。人種問題が本当に解決されるときというのは、黒人が自らの優秀さを誇示したり、白人が自分は差別主義者でないことを声高にアピールしなければならない状況ではなく、人種の違いを誰も気にしなくなる状況だからです。「オバマは母親が白人なので、彼は厳密には黒人ではない」と言う人がいるけれど、そういう違いを心底「どうでもいい」と誰もが思う状態をもって、本当に差別がなくなったと言える。これは、性、年齢、学歴など類似の差別問題についても同様で、違いに敏感な間は、人はまだ差別主義の呪縛から自由になってはいないのです。

 なので、オバマには是非頑張っていただきたい。経済政策が日本と似たり寄ったりのバラマキなのが若干不安ではあるけど、ここで国民の期待に背いたら地獄でミッチェルが「それみたことか」と嘲うに違いない。
 日本のためにも、いまアメリカに沈んでもらっては困ります。ファイトだ、オバマ