甦るEV

 瀕死の巨人GMが再生の切り札として切って来たカードが、あの電気自動車だというニュースに、私はかなり驚きました。というのも、GMは十年前、同社初の電気自動車 EV1を一度はリリースしながら、2003年に突如計画を中止し、EV1はあっという間に全台回収され文字通り「抹殺」されたという経緯があったからです(この一方的な暴挙に怒ったエコ派が抗議して作ったドキュメンタリー映画『誰が電気自動車を殺したか?』は、日本でも普通にレンタルビデオ屋に置いてあります)。

 このGMの回収決断の理由としては、技術的に未熟だったことや、利益の減少を危惧する石油企業の利権、そして無駄にデカイ車に乗りたがり、環境保全なんてどこ吹く風のアメリカ人の気質などが挙げられていますが、この一件で多くの人が「アメリカで環境ビジネスは無理だ」と感じたことは確かでした(町山智浩『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』「実用化された電気自動車はなぜ消えた?」もこのテーマを扱っている)。それだけに、今回の電気自動車を復活させるという判断は、相当切羽詰っているのだな、ということをうかがわせると同時に、再度、アメリカのビジネスに「エコ」という概念が根付くかどうかの実験になるでしょう。