二つの黒い箱

 Oracleのセミナー「Oracle Exadata Summit」を覗いて来ました。さすがに盛況で300〜400人ほどの席はほぼ埋まっていました。割と若い人たちの姿も多かった。

 Exadata (Database Machine)の高速化のポイントは、大きく以下の三つです。

  1. ディスク側で絞り込みを行うことで CPU へのデータ転送量を減らす(インテリジェント・ディスク)
  2. 並列処理
  3. ディスクと CPU の間のネットワークを太くする(InfiniBand

 これらの方法は、意外なものではありません。データベースを高速化しようとしたら、これ以外の方法は無い。ライバルの Netezza もまさに同じ方針を採っている(というか Exadata は Netezza に触発されて真似をしたものです)。これで日本でも、Netezza VS HP Oracle 連合軍の戦いが本格化するでしょう。その意味では、ようやく役者が揃ったとも言えます(ああ〜 Neoview よ〜お前は〜どこーへー飛んでいくう〜)。

 どちらが勝つかは、まだ全く分かりませんが、今回の件で意義深かったのは、アプライアンス(専用装置)というアプローチがデータベースの世界でも有効であることが示された点です。こういうブラックボックス・ソリューションは、コンピュータの世界では古くからあって、家電の世界はアプライアンスでないと商品として成立しないし、IT の世界でもルータなどネットワーク機器は極めてアプライアンスとしての完成度が高い。でも、それがデータベースのように汎用製品に成立するとは、これまで信じられていませんでした。もちろん、アプライアンス戦略は DWH というデータベースの世界のごく一部の領域にしか当てはまらないでしょうが、それでもなかなかのコロンブスの卵だった。これを立てて見せた Netezza の功績は大きい。

 これまで、IT 業界では、ブラックボックスを汎用的で代替可能なモジュールへ分割するオープン化が支配的な趨勢でした。最近の SIer の仕事の半分は、モジュール同士の組み合わせを考えることになっているぐらいです。その点で、ハードもソフトも統合してモジュール選択の自由度を一切なくすアプライアンス戦略は、この流れに逆行している。この方向を突き詰めていくと、やがて市場にはベンダーとエンドユーザの二人しかプレイヤーがいなくなり、中間搾取していた SIer は用済みとして淘汰されます(事実、家電業界ではインテグレータという商売は成り立たない)。

 まあ実際にはそこまで完全になんでもかんでもアプライアンス化はされないでしょうが、今はもしかしたら、これから起きる大きな変化の前触れに当たるのかもしれません。