罪と罰の値段

 闇サイト殺人の判決で、被告3人のうち、二人が死刑、自首した一人が無期懲役とされました。その差がついた理由が「自首したことにより共犯者の逮捕や、その後に起こり得た犯罪も抑止した」ということだったことに、私は驚きました。だってこれ、結果的に司法取引をやったということでしょう。それも検察とは無関係に、裁判官の独断の判断で。もちろん被告人にそういう話がもちかけられたわけではないのでしょうが、日本に司法取引の制度はないのに、この理由に基づく減刑は許されるのか。

 司法取引にも確かにメリットはあって、複雑な経済犯罪や組織ぐるみの事件では、犯罪者当人の協力がないと捜査が困難なことは確かです。今回のネットを媒介とした犯罪も、犯罪者同士のつながりを割り出しにくいため、共犯者の協力が捜査を非常に有利に進められた要因だったことは間違いない。このシステムはいわば、罪と罰を天秤にかけて取引を行うという点で、司法における市場主義を具現化したものです。しかし、繰り返すように、日本ではまだ法律では認められていない。今後、日本でも裁判の数的増加が見込まれているので(弁護士の数を増やしている以上、仕事も作らなければ彼らが食っていけない)、裁判の簡略化のために司法取引が導入される可能性はあるけど、それは当分さきのことでしょう。まずは裁判員制で足場を固めてから、です。ちょっとこの判決は時代の先を行き過ぎた勇み足のように思います。