何もしてない

 少し前に『日露戦争』を紹介した長山靖生さんが最近ツボ。『「人間嫌い」の言い分』『貧乏するにも程がある』のようなトホホ感溢れる文学史エッセイもうまいし、『偽史冒険世界―カルト本の百年』のような狂気と紙一重の幻想にとりつかれた人々に関する詳細な掘り起こしも力が入っていて素晴らしい。こういう際どい素材を扱う際にも、医者らしく知と情のバランスのとれた筆致が頼もしい。きっと本性としては素材となっている人々に近いのだろうけど(小谷野敦、中島よしみっちゃんに通じる感じるのは私だけか)、長年の努力で今のスタンスを身につけられたに違いない。うーん、今まで読んだことがなかったのが惜しまれる人だ。これからウォッチしていこう。