仕事くれ

 GMはじめ自動車メーカーのビッグスリー公的資金注入を見送られて倒産寸前になっています。先週のエントリに書いたように、私みたいな自動車嫌いは、こういうニュースを聞いたら基本的にはフハハハと笑っていればいいのだけど、でも笑ってばかりもいられないのは、自動車産業が社会にあまりに深く食い込んでいるため、不振がそのまま失業率を跳ね上げ、経済全体に悪影響を及ぼしてしまうからです。アメリカでは職を失った工場労働者たちが溢れています。日本でも、三菱自動車富士重工派遣労働者の削減を発表しました。

 自動車産業の難しいところはここで、ちょうど末期癌が臓器をあまりに深く侵食したがために、摘出すると患者の命を危険にさらしてしまうように、社会にとって長い目で見てマイナスの影響を及ぼすと分かっていても、単純に批判してすませるわけにはいかない。現実的には、必要悪として適当なところで折り合うしかない。

 ことは道路の場合も同じです。昨日、将来的な道路利用量が大幅に下方修正された推計が公表されましたが、それでも道路予算を併せて減らす予定は無く、何十兆円という税金が注ぎ込まれようとしています。これも、決して道路が利用されるから作っているのではなく、第一に雇用の創出が目的なのです(第二には政治献金天下り先の確保だけど)。政治家は道路の必要性を建前では口にしますが、そんなこと真面目に信じている人間は、日本中探してもほとんどいない。だから本当は「穴を掘って埋める」という作業を延々繰り返す公共事業をやっても、十分、雇用創出という目的は達せられます。それなら道路と違って環境も破壊しないし。ただ、あまりに身も蓋もないので誰もやらないだけです。

 それにしても、政治家は下方修正された推計を口々に「あくまで推計に過ぎない」といって無視していたけど、参考にする気がないならそんな推計、最初から出さなければいいのに、と思ったのは、きっと私の短慮であって、この調査によって創出された雇用もまたあるわけで、それだけでも意義はあったとするべきなのでしょう。

 あれ、いつになくポジティブな結論。