雇用創出の画期的方法

 昨日のエントリで書いたエコカー補助金の話に、ちょっとだけ補足を。

 補助金制度は先月で終了しましたが、エコカー減税の方はまだ続いています。TV コマーシャルでも、各社とも「まだ減税が残っている!」と連呼しているのでご存知でしょう。

 ところで皆さんは、何で補助金と減税という二つの異なる仕組みが並存しているのか、疑問に思ったことはないでしょうか。両方とも建前にしている目的は「環境負荷の低い車種への買い替え促進」という同じものです。だったら、どっちか片方の制度で統一してしまった方がシンプルではないでしょうか。

 もし統一するなら、減税の方が手段としては効率的です。補助金の場合、購入した時点で既に値引きされているわけではなく、その後次世代自動車振興センターという社団法人に申請書類を提出して、審査をパスする必要があります。減税であれば、このような面倒な手続きは不要で、既に値引きされた車を購入するだけです。補助金については、特定車種からの乗り換えであるかどうかが給付条件に入っているため、このようなフィードバック型の制度になっているのだと、その存在理由が説明されるかもしれません。しかし、これは理由になっていない。税方式にも「還付」という形でフィードバックのシステムを持っているのだから、そこに乗せてしまえばいい。おまけに、エコカー減税が既にあるのだから、その効果が足りないと思うなら、補助金という新しい制度を作らなくても、課税にメリハリをつけるだけで効果をコントロールできます。こう考えると、減税にプラスして補助金というのは、屋上屋を重ねるようなもので、論理的には不要な制度です。

 しかし、今までの話は、あくまで購入者や自動車メーカー側から見た場合の話です。視点を変えると、補助金制度には存在意義が見出せます。どのような意義かと言えば、わざと面倒で非効率な仕組みを作ることで、それを運営・処理するために必要な雇用を作り出せることです。先の次世代自動車振興センターには、日夜、膨大な量の申請書類が届けられます。当然、それらが適正かを審査し、適正なものには給付を行い、不適正なものはつっかえすという多量の事務作業が発生する。つまり、それだけ多くの雇用を創出できるということです(ただし公務員限定)。しかも、こういう法人は当然のごとく官僚の天下り先として重要なので、渡辺喜美氏が指弾するように、霞ヶ関にはわざと非効率な制度を作ろうとする誘惑が存在する。次世代自動車振興センターのサイトは、代表理事の杉浦精一氏以外の役員名が掲載されていないという、怪しさ爆発な代物ですが、公表されれば「ああやっぱり」という面子であろうことは、想像に難くありません。

 昨年のエコポイント制度の時に、渡辺氏が憤慨したように、減税でやれるところをわざと補助金制度にして雇用を創出するのは、霞ヶ関の得意技の一つです。環境負荷のように外部不経済に対するバランス政策を行う場合、最も適切なのは昨日も書いたように増税ピグー税)です。この不人気な方法が政治的に難しい場合、よく取られるのがエコカー減税のようなインセンティブ方式です。一番最低なのが、効果も微妙な上に天下り団体だけが得をする補助金方式であるということは、大人の社会を生きていくうえで覚えておいて損はありません。